私の「親家片」体験

娘との同居で空き家になる家を親戚に格安で譲る 第3話(最終話) ~価格よりも早く売却できるほうを選択~

空き家でもお金はかかる! と早めの売却を決意。2000冊の蔵書の処分で娘の知恵を借りる    小林民さん 横浜市・92歳

 

小林さんは、横浜に住む長女のマンション宅を、新たな住まいにすることを決断した。独身のひとり住まいであることが決め手になったのだろう。同居先は5階建てマンションの2階。長女が1997年に購入した3LDKの一室である。

 

小林さんが売却した建物と土地は、延床面積約130㎡の2階建て木造住宅。土地は先祖代々のもので、広さは約270㎡である。両方合わせた固定資産税評価額はおよそ790万円だった。それに少しばかりの山林がある。

「たとえ安い値段でも、もう住まない家ならなるべく早く手放したほうがいい」と小林さんが考えたのは、家を維持するにはお金がかかり、それは空き家であっても同じ、ということを小林さんが自覚していたことが大きい。

 

「夫の死後も定期的に屋根の修繕や、外壁の塗り替えを実施。メンテナンスのたびに数十万円の費用がかかりました。空き家だからといって、自分の家である以上、荒れ放題にはできません。ご近所の目もありますから。それで売値は評価額の半分以下でもいいから、なるべく早く処分できるほうを選んだのです」

 

2000冊にもおよぶ蔵書は、引き取り価格無料で古書店に

田舎の一軒家から都心部のマンション移る際に、娘にも手伝ってもらいながら家具や生活道具、衣類を片づけた。中でも、一部屋を占拠していた夫が残した2000冊の蔵書の処分で思案に暮れた。

「夫が大事にしていたものなので、図書館にでも寄付できればいいと考えていたのですが、捨てることも覚悟しました。古い本ばかりでしたから、図書館でも迷惑かもしれませんので。それで娘にも相談しました」

 

小林さんの長女は、図書館や古書店に問い合わせたらしい。図書館にはやんわりと断られたが、古書店業界のネットワークから同郷出身で東京で古書や絵画、骨董品を扱っている人を紹介してもらったところ、2000冊という量に興味を覚えたらしく、家まで蔵書を見にやって来た。

「その方は、その場で引き取ることを決め、翌週にはすべての本をトラックに積んで持っていきました。引き取り価格は無料。その代わり2000冊すべてを引き取ってもらいました。たぶん、中には高値のつく奇購本もあったのでしょうね。話が決まるのも取りに来るのも早かったですから」

 

誰かに読んでもらえれば資源ゴミにするよりはマシと小林さんは考えたようだ。

小林さんには、まだ気にかかることがある。山林の処分だ。山林は2500㎡ほどの広さだが、固定資産税もかからない。維持費の負担はないが、ほぼ無価値のため売却はできないだろう。小林さんは夫の遺影に語りかける。

「お父さん、うちの山、誰に譲りましょう? 私の最後の仕事ですね…」

 

(完)