私の「親家片」体験

1坪3000円の「田舎の古民家」。知人の紹介で売却が実現 第2話 ~地元の人脈のおかげで直接売買~

3か月に1回のペースで帰郷しては空き家の手入れをする手間が次第に負担となって…… 岸本靖夫さん 岡山県・66歳

 

父親が亡くなってからひとり暮らしをしていた母親が特別養護老人ホームに入居することになり、岸本さんの実家は住む人がいなくなった。

親と離れて暮らす子どもの多くが抱える、今日的問題といえよう。

親が病気で入院したり、介護施設に入居してしまったために、定期的に遠路見舞うといった生活を続けている人は少なくない。やがては、必然的に空き家の管理や処分等の問題も降りかかってくる。

 

脳梗塞で倒れた岸本さんの父親は、1990年に75歳でその人生を終えている。以後、岸本さんの母親は、自分で食べるだけの野菜を作り、年金でやりくりする生活を続けていたが、2006年に老人ホームに入居。岸本さんの実家は、誰も住まない空き家になったのである。

 

母は、老人ホームに入居するにあたって、家財道具はそのまま残し、必要最低限のものだけをホームに持ち込んだ。このころから、岸本さんの心の中では、「いつかこの家を処分するときがくるのかな」という思いがあったという。

岸本さんの母親は、その後、循環器系の病を患うなどして、09年に82年の生涯を閉じた。その間岸本さんは、3か月に一度のペースで、実家の管理のため現地に足を運んでいた。

 

「人が住んでいないとすぐに廃屋になるというので、できるだけ実家に帰って掃除などをするようにしました。もともとすき間風の入る昔の日本家屋ですけど、窓を開け放って布団を干したり、周囲の草を刈ったりね。6月ごろに草を刈るのが一番大変だったかな。とにかく、放っておくとすぐに草木で覆われてしまうんです」

 

購入者が気に入ったのは平屋の造りと梁の太さ。希望購入価格は坪あたり3000円

 

田舎暮らしを希望していた購入者は、隣の造園業の社長の同級生だった。同窓会で出会い、そのとき岸本さんの実家の情報を伝え聞いたという。

「購入希望者は隣の社長と一緒に家を見に来られました。ご家族も一緒でしたね。とくにご家族には土間や納屋、家畜小屋などが珍しかったようですね。ご次男は、家の特徴的な立派な梁が気に入ったと言っていました。ご本人も、畑で野菜も作れるというのが、希望に沿ったようでした。うちは平屋の建物ですが、田舎暮らしを望む人には平屋が好まれるらしいですね」

 

購入者にとっては、少年時代を過ごした土地であり、勝手知ったるところもあっただろうが、家族にとっては珍しいことばかり。いずれにせよ岸本さんの実家は、希望していた条件にぴたりとはまった。

岸本さん、造園業の社長、購入者という地元つながりで、空き家を売却できたという典型的なケース。それも不動産業者の仲介案件ではなく、売主と買主の直接取引だった。購入者が出した買値は、家と敷地、畑をつけてもらって300万円だった。

 

「買いたいという人がいる」という電話から1年足らずで、100坪の敷地と古民家、3反(900坪)の田畑の譲渡が300万円で成立した。1坪あたりに換算すると、おおむね3000円ということになる。

 

何はともあれ売却が決まって、岸本さんとしては一段落。しかし、売却が決まったのは母親が亡くなってからまだ1年、そのため岸本さんの実家は、まだ母親が暮らしていたころのままという状態だった。

第3話に続きます