私の「親家片」体験

「母が30年間暮らした一軒家から 35㎡の1LDKに」 第2話 ~東京と福岡を往復しながら母の住まいを探す~~

仕事の忙しさに加え、家事・育児・親家片が一度に押し寄せてきた怒涛の日々 山口福子さん(仮名) 東京都・54歳

 

山口さんは市役所の福祉課に行き、要介護認定の申請をした。ひとまず有料老人ホームのショートステイに朝子さんを預ける手配をして、いったん東京に戻った。

しかし、実際問題、朝子さんを山口さん宅に引き取るのは、スペースの問題もあり難しかった。かといって夫の実家の隣から引っ越しもできない。

 

悪いことは重なるもので、長年、子どもの面倒を担ってくれた義父母も当時、体調をくずしていて、入退院をくり返していた。

「仕事も忙しいときでした。この状況の中、わが家の近くに母の住む場所を探し、母の引っ越しをし、遠く離れた福岡の実家をたたまなくてはならない。考えただけで頭がクラクラするほどでした」

 

雑誌で高齢者用施設を知り、苦渋の決断をする

 

このとき役立ったのは雑誌で得た情報だった。

「有料老人ホームのほかにも、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、ケアハウスといった高齢者用の施設の違いについて知っていたのは大きかったと思います。私の住む沿線で有料老人ホームかケアハウスを探すことにしました。でも、母にそれを話すときはつらかった。ひとり娘なのに、一緒に住んで母の面倒を見られないなんて、申し訳ないとも思いました。でも、母が東京に出てくれば、私も頻繁に顔を見に行けます。だから、思いきって東京に出てきてほしいと母を説得しました。何度も救急車を呼んだこともあり、母もひとりで住むのは限界だと思っていたのでしょう。案外、すんなりと了承してくれました」

 

福祉関係の仕事をしている友人にも、状況を包み隠さず打ち明けて相談した。その友人から数日後、「高齢者向け優良賃貸住宅の空きがあるよ」と連絡が入った。

「日中はヘルパーの資格をもつ管理スタッフが常駐していて、家事援助や介護支援の手配もしてもらえる高齢者向けの集合住宅を紹介してくれたんです。場所は私の自宅の最寄駅の、5つ先の駅の近くで、ロケーションもばっちりでした」

すぐに見学に行った。

「スーパーや病院も近く、緊急時用の通報ボタンもあり、なによりコミュニティスペースがあって、本来社交的な母にぴったりだと思い、その日のうちに契約をしました。母の状態がどのように変わるのかわからない。たとえ体調が戻ったとしても、これ以上、お互いに不安を抱いたまま遠距離で暮らすのは得策ではない。答えが出ていましたから、一刻も早く、母の住まいをこちらに移したかったんです。引っ越しは2カ月後に決めました」

 

朝子さんが夫とともに30年間暮らした5LDKの一軒家から移る先は、35㎡の広さしかない1LDKだった。

第3話に続きます