私の「親家片」体験

【相続体験談】~20年も別居していた嫁と相続をめぐり係争中~主婦弁・澤田有紀の「親家片法律コーナー」~

嫁姑の関係が相続問題につながることはまれではありませんが、今回のケースは、少し事情が違います。同居していた嫁とうまくいかず、それが原因で息子夫婦は別居。その後、籍を抜かないまま息子が亡くなってしまったことで、複雑な相続問題へと発展していきました……。

嫁姑の確執が原因で息子夫婦は別居。絶縁していた嫁が相続人に
井上正子さん(仮名)のケース

井上さんは典型的な地方の農家に嫁ぎ、長年、夫と農業を営んできました。

「財産といったら自宅と田畑が少しで、貯金は老後の生活の足しにするくらいしかありません。でも2人の息子に恵まれ、長男は家業を継いでくれました。兄弟仲もよかった。だから相続でもめるなんて想像したこともなかったんです」
でもじつは火種はありました。長男のお嫁さんの洋子さんと折り合いが悪かったのです。
「嫁とはうまくいかなかった。そのせいか夫婦仲がおかしくなって、嫁が子供を連れて家を出ていってしまったのです。子供がいたから離婚せず、結局、20年別居していました」

そのうち、思いもしなかったことが起こります。正子さんのご主人が亡くなると、あとを追うように長男が54歳の若さで亡くなってしまったのです。
「まさか、長男が私より先に亡くなるなんて思ってもいなかったから、相続のことは何の対策もしていませんでした。自分が住んでいる家の名義を次男に変えるだけなのに、20年間会っていない嫁のハンコが必要になると言われて。しかも息子が亡くなったら、嫁と孫が私の夫の財産を4分の1も相続する権利があるなんて。ぼう然としました」

 

正子さんは、長男の相続人である洋子さんと、洋子さんの娘に、預貯金の一部を渡すかわりに、家と田畑を次男名義にしてくれるようにお願いしました。でも何回連絡しても、洋子さんから返答はありませんでした。
「本当に困ってしまって……。4年たってもらちが明かないので、弁護士の先生に間に入ってもらったのですが、それでも一切返事がないので、先生と相談して、調停を申し立てることにしました」

嫁・姑ともに弁護士に依頼。自宅をめぐって調停で争うことに

すると洋子さんは、すぐ弁護士に依頼して法定相続分の請求をしてきました。遺言書がなかったので、洋子さんと娘さんにも財産を相続する権利があります。相続分を支払うには預金だけでは足りないので、洋子さんは家を売却して支払うように主張。

また、夫である長男が長年家業を手伝ってきたことを根拠に、「寄与分がある」として相続分に寄与分を上乗せした金額を要求してきたのです。さらに次男は大学に行った分、お金がかかっているからと、遺産から学費を差し引いて、次男の相続分を計算するよう主張し、一歩もゆずりません。
「私にとっては20年前に出ていった人で、まさか遺産をよこせと言われるとは思ってもいなかった。家を出たのは私のせいだというのだけれど、20年も前のことですよ。まだ恨みがあるんでしょうかね。長男は家業を手伝っていたけれど、うちは農家で、特にお給料みたいなものもないし、生活費も一緒だったから、お金のことはよくわからない。たまたま次男だけ大学に行ったけれど、トータルで考えたら、次男ばかりにお金をかけたわけでもないと思うのですが……」

 

調停を申し立てたものの、話し合いはすぐに決裂し、現在は次の段階である審判で係争中。洋子さんは、土地の評価についても、時価よりも安い固定資産税評価額での査定では納得せず、裁判所での不動産鑑定を要求しています。
「家の代金分のお金を払えというんだけれど、預金もほとんどないし、家を追い出されたら、老後どうやって暮らしていけばいいのか」

 

「主婦弁」澤田先生からのアドバイス

 

不仲のお嫁さんとそのお子さんがいる時点で、すでにトラブルの火種があるので、お母さんの生活を確保するために、絶対に遺言書が必要なケースです。

遺言書があれば、お嫁さんから相続財産を請求されても遺留分ですみます。遺言執行者を指定しておけば、お嫁さんの印鑑もいらなくなりますよ。

審判では裁判所が決めるので、結果はどうであれ決着はつきます。裁判所は、長年住んでいるお母さんに出ていけとは言いませんから、お嫁さんに法定相続分相当のお金を払うことになるでしょう。でも払えなければ結局、売却することになります。

この場合、お母さんは、お嫁さんが何か言ってくるまで何もしないで住み続けたほうがよかったかもしれません。何度連絡をしても返事をしなかったお嫁さんの権利意識を呼び起こす結果となったのは、やぶへびでしたね。

 

■澤田先生の著書『どうする? 親の相続』には、多くの体験談や相続に関するQ&Aを掲載。相続に関するベストな方法が見つかるはずです!

澤田先生本

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澤田先生の法律事務所 弁護士法人みお綜合法律事務所 http://www.miolaw.jp/

sawada澤田有紀 
弁護士。弁護士法人みお綜合法律事務所代表。奈良県生まれ。1985年大阪大学文学部英文科卒業後、商社勤務、エレクトーン講師を経て専業主婦に。阪神淡路大震災をきっかけに、「何か人の役に立つことがしたい」と一念発起。弁護士を目指す。1回で司法試験に合格し、2000年に弁護士の道へ。専業主婦から弁護士になった「主婦弁」として各メディで活躍中。主な著書に『人生を変える!3分割勉強法』(祥伝社)、『カード&住宅ローン危機』、『相続でもめないための遺言書』『どうする?親の相続』(ともに主婦の友社)など。

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