私の「親家片」体験

70代前半で、一軒家からわが家近くのマンションに引っ越した母 第3話(最終話)~無理強いせず、今は母の気持ちを尊重~

誰かの役に立てると思えば、手放せるものも多い 
柏木静子さん(仮名)50歳・埼玉県

 

いざ引っ越しという日、姉から「庭の池に植えてあるスイレンがほしい! とっておいて」と連絡があり、当日、助っ人として参加していた夫が池に入り、スイレンを一部、バケツにすくってくれました。

ちょうど池で育っていたオタマジャクシも一緒に鉢の中に。鉢の外にこぼれてしまったオタマジャクシもいて、ピチピチはねていました。「こんな生き物もここにいたんだ。でも、もう救えないなぁ」と、ぼんやり思ったのを覚えています。

 

最後に、庭の写真を撮りました。ボケの花が咲いていました。今になって、もっと写真を撮っておけばよかったと思いますが、当時は心の余裕もなく、写真のことまで思い至らなかったのが残念です。

 

自分で片づけられるのは70代前半までと実感

経験して、親家片は「親子の関係が逆転するとき」ではないかと思いました。だからこそ、子どもの上に君臨していた親ほど、親家片がつらく、「こんなに片づけなくてはならないなんて、まるで死ねと言われているみたい……」と感じてしまうのかもしれません。

 

以前、ある高齢の評論家がご自分の経験をもとに「自分で片づけられるのは70代前半がギリギリ」とおっしゃっているのを雑誌で読んだのですが、真実だなあと実感します。

あのときのことを思うと、70代前半という年齢は、母が自ら片づけをするギリギリの年代だったと感じるからです。

 

ゴミを自分で捨てられなくなったり、戸締まりが不安になったら、ひとり暮らしはむずかしい……そうなる前の70代で、生活の場を変える決断が望ましいとも感じます。

親家片を機に母の手作り服を何枚かもらい、部屋着やエプロンがわりにしています。母が吟味した生地は肌ざわりが心地よく、着ていて心身ともにリラックスできます。

 

最近になって、母がようやく衣類を整理する気持ちになってくれて、海外に古着を送るNPOに寄付し始めました。「誰かの役に立つかと思うと、手放せる」のだと感じます。

ものはまだいっぱいありますが、母が生きている間は無理に親家片をするつもりはありません。不必要なものもあっていいし、家族なのだから、多少迷惑をかけてもかけられてもお互いさまだと思っています。

 

(完)


2014/11/21 | キーワド: , , , | 記事: