私の「親家片」体験

借地権は立派な相続財産、売却も可能 第3話(最終話) ~工務店を紹介してもらい売却に成功~

「借地権」の売却価格のルール 一般的な土地売買よりも借地の売却価格は割り引かれる  山崎香織さん 神奈川県・45歳

 

「突然、売ろうと言い出したので驚きましたが、兄は決めたら行動は早かったです。自分の土地の場合でもそうなのでしょうが、借地の場合は地主さんとの関係もあってさらに複雑になるようで、すべて兄にまかせることにしました」
山崎さんの兄は、最初に地主を訪れ借地の買い戻しを打診した。しかし、地主は「買い取る資金も意思もない」という返事だった。そこで不動産関連会社に勤める知人を訪ね、適当な業者を紹介してくれるように依頼。分譲住宅の販売をしている工務店を紹介してもらったという。

「住宅街にあって立地が比較的よかったことで、工務店も借地権つきの土地の購入に前向きなってくれたそうです。ただし、地主さんは2棟の分譲物件にするという点に難色を示しました。しかし、自分で買い戻す気はなかったのですから認めてもらいました」

 

山崎さんの借地売却はこれで終了。埼玉県でも東京に隣接する地域だったことが幸いした。このエリアの不動産は買い手が多い。

しかし、工務店のほうでは「土地つき分譲住宅」で売り出すか、「借地権つき分譲住宅」かでは売値が違う。できれば、高い価格をつけられる土地つき分譲住宅で売り出したかったのだろう。その後も土地の買収交渉を地主と続けていたようだ。

 

借地というのは、「底地」という、地主の持ついわば所有権のようなものの上に、使用権としての借地が乗っている2階建て構造だ。底地はあくまでも所有者である地主のものである。そこで工務店としては、2階部分である借地とともに1階の底地を買収し、一般的な土地売買のできる状態にしたかったのだ。
工務店の交渉はうまくいったらしく、山崎さんの生家のあった土地には、2軒の土地つき分譲住宅が売り出され、いまではそこに新しい家族が住んでいる。

 

借地を売却するとなってから、兄にせっつかれながら親の家を片づけ

 

「兄は現金なもので、ついこの間まで家はこのまま残すと言っていたのに、売却を決めたとたん『実家に残してあるものは、早く片づけろ』と私をせかしました。あんなに心変わりが早いのかと、あきれたものです」

 

家は工務店の手配で解体することに決まっていたので、解体廃材と一緒に処分してもらえるものには手をつけずにすんだという。

「もう使わないタンスやテーブルなどは、残したままでよかったので助かりました。冷蔵庫やエアコンなどの大型の家電品は、兄がリサイクル業者のところに持っていったりしていました。私はもっぱら形見の品の整理でしたね。兄は父が愛用していたカメラや釣竿、私は母の着物をもらいました」

 

家の片づけのために約1か月間、週末に横浜から埼玉まで通った。

「子どものころの写真や賞状、私は学生時代に卓球をやっていたので、そのころ使っていたラケットやユニフォームなどを整理していると、あらためて自分はここで育ったんだなとしみじみ思いました。でもいつまでも思い出に浸っていると片づかないし、期限を決めて、残ったものは家の解体と一緒に処分と割り切りました。最後の日に兄と一緒に庭から眺めた、家の屋根の向こうに地主さんの大きなお屋敷が見える風景は、子どものころと同じでしたね」

 

(完)