私の「親家片」体験

名義は死んだ祖父!  従兄弟に頭を下げて相続手続き 第3話(最終話) ~名義変更のあとは、売却のための片づけを即開始~

名義変更するには、祖父の相続人を探して承諾を得なければならない
前田亮子さん 東京都・55歳

 

実家の売却がきっかけで、土地の名義が祖父のままだったことを知った前田さん。名義変更のため相続人を確定しなければならなくなったが、司法書士からは思いがけないことを言われた。

「祖父の子どもがほかにいないか、戸籍をさかのぼって、相続人を探さないといけないとか。ほかに子どもなんていないと思ったのですが、手続きですから仕方ありません。お金はかかりましたが、もう相続人探しから必要書類の作成まで、全面的に司法書士さんにおまかせすることにしました」

 

祖父母には、前田さんの父親以外に娘がいた。前田さんからすれば叔母である。その叔母夫婦も娘を1人残してすでに亡くなっていた。
「結局、相続人は祖父の孫である私と妹と従姉妹だけでした。従姉妹とは小さいころは一緒に遊んだこともあり、父や叔母の葬儀にも参列し合っていましたが、そんなに親しいという間柄ではありません」
前田さんは、従姉妹に承諾をもらうのも司法書士さんにやってもらえないかと頼んでみた。
「でも、『それはご本人がやるほうがいい』ということで、自分でやることにしました」

土地は妹との共有名義ではなく、前田さん名義にすることにした。家が売れたら半額を妹に渡すという約束になっている。認知症が進んでいる母親の承諾をもらうのは困難と思っていたが、今回は母親は関係ないということだった。

 

従姉妹の承諾をもらい、次のステップは家の片づけと売却

 

話を従姉妹との話し合いの場面に戻そう。結果的には、従姉妹はとくに要求を示すことなく承諾してくれた。
「司法書士さんからは、こういうことは即決がいいと聞かされていました。書類には実印を押してもらうのですが、これには印鑑証明が必要だったりして手続きに時間がかかるので、話をする時点で承諾の証となるよう謝礼は置いてきたほうがいいとも言われました。
金額は大きすぎると『そんなに払うからには何かある』と勘繰られるし、1万、2万では安すぎるので10万円ほどを商品券にして包みました」

従姉妹にとってみれば、伯父さんが住んでいた家なんだから伯父さんの家族が相続して当たり前という気持ちだったに違いない。だが、周囲から不動産の半分は権利があるとか、売ったお金の何割かはもらったほうがいいなどと吹き込まれたりすると、次第に気持ちが揺らぐもの。相続トラブルではよくあることだ。

 

事実、従姉妹から承諾をもらったあとになって、「前田さんはたった10万円で家と土地を持っていった」という噂があることを妹から聞いた。そういう雑音を消すためにも、実家の売却は早いほうがいいと、前田さん姉妹は実家を取り壊し更地にして売却することにした。更地のほうが、固定資産税は増えるものの売却はしやすくなるとアドバイスされたからだ。そのため、いまから家の片づけを始めている。
「私の場合は、東京からなもので1週間程度滞在して、家の片づけをしながら介護施設に入居している母に会いに行ったりしています。だいたい妹と一緒です。片づけていて見つけた昔の家族の写真や部屋の様子を撮った写真などを見せると、なんとなく思い出すのでしょうね。ちょっとした反応があるのです。ですから母が昔着ていた着物などが出てくると、捨てずに見せに行ったりしてなかなか片づきません」

家の解体費用の見積もりはすでに取ってある。
「いつ解体するかはまだ決めていません。とりあえず片づけが全部終わってからと考えています。母の認知症が進んでから家の中は一時ゴミ屋敷のようでしたが、そうしたゴミは少しずつゴミの回収日に出して始末しました。1か月も滞在すれば、家の中はあらかた片づくでしょうけれどもね」

 

(完)