私の「親家片」体験

境界線があいまいで売れない義父宅 第2話 ~境界の確認で予想以上の労力を使う~

長男と長女の結婚。自分の実家と妻の実家両方の片づけの面倒を見なければならないことに  飯島勝さん 東京都・59歳

 

飯島さんが売却しようとしたのは空き家となった妻の実家。

飯島さんの義母が亡くなったのは3年前。義父はそれよりもずっと前、70歳を前に他界している。最寄り駅から徒歩25分。築40年の古い家ということもあって評価は低く、相続税の節税で頭を悩ますこともなかった。ところが、売却しようとしてはじめて、境界標がないことに気がついた。
「義母が亡くなってから確認したのですが、自治体の固定資産台帳にはきちんと登録されており、毎年、固定資産税は支払っていました。法務局に登記もしていました。ところが、売却するために妻の実家の土地を実測するため隣地との境界を確認することになったのですが、これができなかったのです」

登記がしてあっても、所有する土地については、自分のものであるという権利の範囲を明確にしておくことが不可欠。それを示す標識が境界標である。その境界標を基準にひとつの土地の面積を測るわけだが、それが確認できなければ、境界立会いを経て、「筆界(ひっかい)確認書(かくにんしょ)」(隣接した土地所有者間で境界を合意したことの確認書)や「立会証明書」といった書類を作成することになる。
「そのころまでずっと借家住まいでしたから、隣接地との境界を示す境界標の存在すら知りませんでした。それがはっきりしないと境界線がずれたりして隣の家などとトラブルになるんですね」

 

東京の丸の内や銀座なら数㎝ずれるだけで、所有する土地の価格が億単位で違ってくることもあるだろうが、飯島さんの妻の実家は坪10万円を切るような地価のところ、「それでも大変な思いをしました」と飯島さんは言う。

 

いずれは夫婦それぞれの実家を相続、それまでは貸家住まいを選択

飯島さんは、大学卒業と同時に入社した企業の子会社の社長だ。年俸は1000万円を超すので、経済的には恵まれているほうだろう。だが、飯島さんは、つい最近まであえて借家暮らしを選んでいた。

飯島さんの出身地は北陸。奥さんは関東出身。ひとりっ子で育った奥さんの実家は、借家からは車で30分の距離にあった。経済的にマイホームを持とうと思えば持てた飯島さんが、借家住まいを選んだ本音を明かしてくれた。

「私の代わりに実家を継いでくれるはずだった弟が、私が結婚した翌年に交通事故で亡くなってしまいました。それ以来、実家はおやじとおふくろのふたりだけ。妻の実家もいまはふたりとも亡くなりましたが、義父母だけの生活でした。おのずと、将来は2軒の家をなんとかしなければならないだろうと考えるようになり、自宅を持つことをためらったのです」

 

第3話に続きます