私の「親家片」体験

80歳でマンションへの引っ越しを決めた母  第1話 ~親自身が率先して自ら片づけ~

老いの現実と、古い家を補修しながら暮らす大変さを考え、母はひとりで引っ越しを決断    鈴木雅恵さん 東京都・56歳

 

「母が40年間暮らした一戸建ての家からマンションへの引っ越しを決めたのは、79歳のときのことでした。“80歳までに私は引っ越しをします”と私と兄に宣言したんです」

 

鈴木さんの母・千代子さんは65歳のときに夫を亡くし、ひとり暮らしを続けていた。

「庭にはバラを何本も植えて、毎朝2時間、手入れをしてとてもきれいにしていました。洋裁や編み物が上手で、読書が趣味。近くの図書館に週に2回、通っていました」

鈴木さんは結婚後、実家の沿線に住み、仕事が休みの土日には母の顔を見に実家を訪ねていた。

「兄は兄、私は私、母は母と独立して、とてもいい関係でした。母はひとりで旅行に参加したり、家をリフォームしたり……。私たちに何も頼らず、ひとり暮らしを楽しんでいたんです。一方で、自分の老後についても、早い時期から考えていました。母は車の運転が好きだったのですが、70歳になると車を処分。スパッと運転をやめました。高齢者の事故が多いからというのがその理由でした」

 

そして70代半ばから、千代子さんはマンション販売のチラシを見るようになったという。

「私も新築マンションのモデルルームや中古マンションのオープンルームを見て歩くのが好きなんです。それで何度か、母を誘ったこともありました。母が75歳になったときには、二人で高齢者専用のマンションも見に行きました。食事も用意してくれるというマンションだったのですが、母はそのとき、まだこういうところは早すぎる、まだ自分で食事を作りたいと言っていました」

 

やっと見つけた物件は、自分好みに改装できる中古物件

78歳になったお正月、顔をそろえた鈴木さんと兄に、千代子さんは家の今後について切り出した。

“あなたたち、将来、この家に住むつもりがある?”

“駅から遠くて不便だからなぁ。それにもうマンションを買っているし”

“私もマンションがあるから、ここに住むことはないと思う”

 

首を横に振った二人に千代子さんは言った。

“わかったわ。じゃぁ、そういうことでこれからのことを考えてみるわね”

「実家は古いので、雨どいが壊れたり、メンテナンスも大変。年を重ねて、草むしりなどの庭仕事も負担になっているようでした」

そんな矢先の転居宣言だった。

「去年できたことができなくなる老いの現実と、古い家を直しながら住み続ける大変さを考えての決断だったと思います」

 

それから鈴木さんは千代子さんと20件余り、マンションを見て回った。しかし、なかなか千代子さんが首を縦に振るマンションが見つからない。

「すべてがお仕着せ仕様のマンションを母は望んでいないと気がつきました。それで中古マンションにしぼりました。中古ならば、好きなようにリフォームできますから」

 

そして見つけたのが、築15年のマンションだった。

「それも実家の最寄駅から徒歩5分。近くに100円ショップやスーパーもそろっているんです。買い物も便利だし、70㎡と十分な広さがありました。駅近なので、私も通うのに便利といいことづくめなんです。母は、朝、昼、晩と通って、環境や日当りなども確認し、管理費などの支払いも考慮し、購入を決めました。私たち子どもが手伝ったのは、契約書と重要事項説明などの再確認だけでした」

 

第2話へ続きます