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主婦弁澤田有紀の「親・家・片」法律コーナー 第2回 相続問題のポイント

親が亡くなった場合の相続問題のポイント

親の家を片づける状況としては、

①親が亡くなった場合、

親が一人で生活できなくなった場合で、

②親の判断能力がある場合と、

③判断能力がない場合に分けられます。

まず、①親が亡くなった場合の相続の問題について解説します。

(1)まず遺言があるかどうかを探す

まず問題になるのは「遺言」があるかどうかです。

遺言には、大きく分けて「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。

遺言があるかどうかの確認の方法ですが、公正証書遺言の場合は、公証役場に遺言が保管

されており、遺言があるかどうか、どこの公証役場で保管されているかを近くの公証役場で

調べてもらうことができます。遺言が保管されている公証役場がわかったら、その公証役場に

赴いて遺言書の謄本を交付してもらいます。

自筆証書遺言の場合は、故人が信頼できる人に預けているとうい場合もありますが、

そうでない場合には見当をつけて探すしかありません。自筆証書遺言が出てきた場合には、

封を切らずにそのままの状態で保管し、すみやかに家庭裁判所で「検認」という手続きをする

必要があります。「検認」を申し立てると、家庭裁判所で裁判官が遺言書の内容を確認する期日が

指定されて、法定相続人全員に通知がされますので、その場に立ち会うことができます。

 

(2)相続するか、放棄するかを決める

次に相続をするかどうかを決めます。

相続はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産すなわち借金や保証債務なども相続の対象に

なります。「プラスの財産だけ貰って借金はいりません」というわけにはいきませんので、

相続を放棄する場合には相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に

「相続放棄の申述」をする必要がありますので、財産や借金がどれくらいあるかを早期に把握する

必要があります。


(財産の調査について)

不動産は法務局登記簿謄本を取り寄せて確認します。どこに不動産を所有しているのかが

わからない場合は、固定資産税の通知書がないか探してみます。不動産が存在する市長村の役場に

申し出て、固定資産台帳を名寄せしてリストアップしてもらうことも可能です。

金融資産については、家の中をくまなく探して、通帳や証券会社、保険会社からのお知らせなど

手がかりになりそうなものを集めます。しばらくの間は、故人あての郵便物は新たに来るものも含めて

チェックが必要です。

通帳や郵便だけでは網羅できないかもしれませんので、取り引きをしている可能性がある金融機関などに、

直接問い合わせることもできます。最近はネットなどで取り引きをしていると通帳も郵便物もない場合が

ありますので注意が必要です。ゆうちょ銀行であれば、その地域を管轄する貯金センターに照会できますが、

その他の銀行などは支店単位でないと応じてくれない場合が多いようです。
いずれの場合も、相続人であることを戸籍謄本などで証明すれば、取引の履歴や残高などを回答してくれます。

保険については、弁護士に依頼すれば弁護士会から生命保険協会に包括して調査することができます

(弁護士法23条照会)ので、加入している保険の状況などが把握できます。


(負債について)

通帳がみつかれば、カード会社などの引き落としの記載がないかどうかを確認し、引き落としがある場合は

カード会社に連絡して詳細を確認します。

また、督促状などが来ないかどうか注意して郵便物などをチェックしてください。

 

(太字の専門用語については下記の解説も参考にしてください)

公正証書遺言

遺言書の方式のひとつ。公証人の前で、遺言者が遺言の内容を述べた内容を公証人が正確に文章にして作成する。

 

自筆証書遺言

遺言書の方式のひとつ。遺言者が紙に自筆で遺言の内容を全部書いて、日付・氏名を記し、署名の下に押印をすることによって作成する遺言。簡単に作成できるが、素人判断で作成すると形式面で無効になったり、内容が不明確で相続手続きに使えないこともある。

 

公証役場

公証人が執務をしている事務所。(1)公正証書の作成(2)文書や会社の定款の認証(3)文書に対する確定日付の付与の業務を行っている。私的な文書に対して公のお墨付きをもらうところ。

 

遺言書の謄本

公正証書遺言の写し。正本が公正証書遺言として公証役場で保管されていることを証明するもので、謄本をもらって相続の手続きなどに使用する。

 

検認

相続が発生した後、自筆証書遺言を発見した者は、家庭裁判所に申立てをして、その遺言書の存在と内容について検証してもらい、その結果を裁判所に「検認調書」にしてもらう必要がある。検認調書をつけないと自筆証書遺言は相続手続きに使えない。

 

法定相続人

被相続人が死亡した時に、相続する権利がある人。民法により、相続できる親族の範囲が定められている。

 

保証債務

他人(主債務者)の借金について保証をすると、自分が借金をしていなくても債権者に対して返済の義務を負う。主債務者が借金を順調に返しているうちは特に債権者から連絡もなく、保証をしたことを忘れていることもあるが、保証債務も相続人が背負うことになるので要注意。

 

 相続放棄の申述

被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをし、行う。きちんと手続きをしておかないと、借金などの債務を相続していないことを債権者に主張できない。

 

法務局

不動産や会社の登記を扱う役所。

 

登記簿謄本(不動産)

不動産の権利関係を公示するもの。表示部分に不動産の面積・構造などが記載されるとともに、所有権や担保権などの詳細が記載されている。不動産の所在地がわかれば誰でも閲覧や謄写ができる。

 

固定資産税の通知書

不動産が所在する市町村から年に1回(5月頃)、固定資産税の課税について郵送されてくる。

 

名寄せ

その市町村内に所有する不動産の物件を所有者の名前で検索して一覧表にしてもらうことができる(ただし、本人や相続人の分のみ)。

 

貯金センター

ゆうちょ銀行の貯金事務センター。ゆうちょ銀行の貯金は郵便局単位ではなく、各地域ごとに設けられた貯金事務センターで管理されている。

 

澤田先生の法律事務所 弁護士法人みお綜合法律事務所 http://www.miolaw.jp/

sawada澤田有紀 
弁護士。弁護士法人みお綜合法律事務所所属。奈良県生まれ。昭和60年大阪大学文学部英文科卒業後、商社勤務後エレクトーン講師に。阪神淡路大震災をきっかけに、「何か人の役に立つことがしたい」と一念発起。弁護士を目指す。1回で司法試験に合格し、平成12年に弁護士の道へ。専業主婦から弁護士になった「主婦弁」として各メディで活躍中。主な著書に『人生を変える!3分割勉強法』(祥伝社)、『カード&住宅ローン危機』、『相続でもめないための遺言書』(ともに主婦の友社)。


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2014/07/18 | キーワド: , , , , , | 記事: