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売る? 売らない?親と話し合うタイミングはいつ?【大久保恭子の親の家の有効活用指南】

「親が亡くなったあとのことを、親が元気なうちから話し合っておいたほうがいい」とはよく言われますが、実際には「土地はどうする? 売るの?」など具体的な内容を持ちだすのは憚られるものです。しかしその結果、空き家になった実家をもてあましている人が多いのも事実。どんな機会に話をするのがいいのでしょうか。大久保先生に教えていただきました。

親の意向が分かっていれば、子の負担も減る

親の家をどうするか?について親の生前に話し合うという親子は、多くはありません。

『ゆうゆう』読者アンケートでも、ほとんどの方が「話し合いはない」と回答しています。そして「ない」と答えた方の多くが、親の死後に、親の家をどうしたらいいか迷い、空き家にしているのです。

アンケートの中には、親からこうしてほしいという遺言を受け取っていれば、その内容がたとえ不本意なことであっても、それに従いました、そのほうがよほど楽、とのコメントがあり、印象的でした。

少ないながら話し合いがあった事例としては、東京都の中村幸子さん(仮名66歳)のケースをご紹介しましょう。
「ひとり暮らしが難しくなった義母を長男である夫(仮名67歳)が4年間説得し続けたあとに呼び寄せ同居することに。それを機に、親の家をどうするかについて義母と夫が話し合いました。義母にはまだ自分の意思を伝えたり、判断したりする力が残されており、話し合いの結果『売る』ことを決断しました」

また、茨城県の菊池裕子さん(仮名61歳)は、「母のひとり暮らしが難しくなりケアハウスに入ったため、誰も住まなくなり、管理も大変になるので、売れるときに売ろう、と母ときょうだいで話し合い、『売る』と即決しました」とのことでした。

一方、事前に話し合うことなく夫の親が亡くなってしまったという愛媛県の田宮道子さん(仮名57歳)は、「空き家のまま1年が過ぎました。親の意向を確かめる機会を逸し、親の家財道具にも思い入れがあり、なかなか処分できず、今日に至っています」とのこと。

こうした事例からも明らかなように、親の意向がわかっている、わかっていないでは、親の家に戻らないと決めている子の対応は、ずいぶん違ってくるものです。

話し合いの好機は親の終活が始まったとき

親子で話し合えないのは、死を隠ぺいしがちな現代のひとつの傾向かもしれません。親は自分の死を、子も親の死について語ることをはばかります。その結果、親の死後に親の思いを推し量りかねて、生前に意向を確かめておけば、残された家についてつらい逡巡から逃れられたのに、と後悔しがちです。また、親との語らい
を通して、自分の知らない親の人生を垣間見るという貴重な機会も逸してしまいます。

ではどのタイミングで親子の話し合いをもつのがいいのでしょうか。波風立てず、素直な気持ちで話し合いができる心持ちになるのは、親が終活を考え始めたときです。元気なうちに自身のための葬儀やお墓の準備を始めたり、残された者が親の財産の相続を円滑に進められるための計画を立てておくことなどの言動、行動が始まってきたときが、話し合いの時期です。

親の家の空き家対策について、もっと詳しくお知りになりたい方は、こちらの本をぜひ!

『どうする? 親の家の空き家問題』著 大久保恭子

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「マンション評価ナビ」の企画・運営を手がける㈱風の代表取締役。
1979年リクルート入社。週刊住宅情報編集長、執行役員等を務める。日立キャピタル業務役員、日本住宅ローン取締役を経て、2005年、㈱風の代表取締役就任。一般財団法人 住まいづくりナビセンター理事を兼務。
その他、国土交通省 社会資本整備審議会建築分科会委員、東京都住宅政策審議会委員などの公職を歴任。著書に『マンション選びは「立地」がすべて』『お片付けは「家ロジ」で。』がある。

 


2015/10/05 | キーワド: , , | 記事: