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遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」第40回 ~早めにしておきたい、不動産の無料査定による把握

リフォームや売却など、いくつかある選択肢の現状把握を

日本では経済的にも人口構造的にも、一部の地域や物件を除けば、この先、不動産価値が上昇する“可能性はほとんどない”といっていいでしょう。すでに空き家になった実家を相続したり、将来親が亡くなれば空き家になることは確実だという人は、今、何をすればいいのでしょうか。

自分が住んでいる物件だって、将来は子どものお荷物になるかもしれないのですが、まずは親の住んでいる(住んでいた)家をどうするのかを考えなければなりません。現に親が住んでいるからといって、何もせずそのままにしておくわけにはいかないということはおわかりですよね。

今すぐに売らないにしても、親に任せておいて何とかなるわけではありません。親の家を片づける遺族になる側が、今のうちから将来に向けて、プランを立てておかなければなりません。自分のための対策は自分で行い、自分の子どものためにもよく調べておきましょう。

私どもも、遺品整理と不動産売却を併せて依頼されることも多くなり、不動産業の許可を取得し無料査定サービスを始めていますが、すぐにでもしなくてはいけないことは“現状の把握”です。今現在の査定価格や、近隣の最近の取引の実例価格や、今後の動向を確認しておくことです。

 

「賃貸にする場合は、いくらぐらいのリフォーム代が必要で、いくらで貸せるのか?」

「今、一般に売却する場合は、どれくらいの価格になるのか?」

「建売業者などに売るときは、どれほどの値段に下がるのか?」

「最近、同じマンションで売りに出ていた部屋はいくらで売れたのか?」

「数年後の地域の人口や不動産価格はどのようになるのか?」

「建物の築年数は? 昭和56年以前の旧耐震の建物かそうでないか」

などといったことを、今のうちに知っておきましょう。

 

つまり私どものサービスは、「今どうするのか」ではなく、「いざというとき」に想像以上に安い金額を提示されて落ち込まないようにするために、現状を把握しておきましょうというものなのです。

子どものために購入した土地が、今では負担になってしまう

ある講演会で、高齢者の皆さんにこのようなお話をさせていただく機会がありました。すると講演終了後、不動産について相談にのって欲しいと10人ほどの方が集まってきたのです。

会場の都合もありすべての相談にのってさしあげることはできませんでしたが、「不動産があるから安心だと思っていたのに……」と、まだ不動産神話を信じている人が多く、私の話を聞いて、不動産の資産価値があまりに下がっている現状に驚いたわけです。

「別荘地があるのですが、どうでしょうか、売れますか?」

「投資用物件として購入したのですが、一度も現地に出向いたことはありません。更地のままで、荒れ果ててしまっているはずです。そんな物件はどうでしょうか? 売れるでしょうか?」

かなり以前に購入した別荘地を所有したままの方がとても多く、なかには、カタログを見ただけで別荘地を購入したという方もいたので驚きました。

こうした物件は、ほとんど引き合いがなく、知らない第三者が不法に占有してしまっていたり、木が生い茂ってはっきりと場所を確認できなくなっているケースもありました。

関東地方にある古家付きの土地でしたが、何年も売れないために、不動産会社に泣きついた方もおられました。

「子どもには迷惑をかけられないので、300万円渡すから引きとってもらえませんか」

これらの多くは親が子どもに不動産を残そうという思いで一所懸命働いて手に入れたはずなのですが、その不動産が邪魔者になってしまうというケースも珍しいことではないのです。

しかし、親が整理をしてくれなければ、最終的に責任を負わなくてはならないのは、それを遺産として相続する子どもたちです。そう、読者の皆さんなのです。

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越し®」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/