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遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」 第38回 ~なぜ遺言執行者を指定しなかったのか~

相続前とは親族間の関係性が変わってしまう可能性も

自分の遺言を書くということは、その通りに実現しないと意味がありません。

遺言執行者を指定しておくことは当然のことだといえますが、実際には指定されていなかったため、大きな相続争いに発展したケースも目にしてきました。

「なぜもめごとを防ぐ準備をしていなかったんだろう?」と不思議に思いましたが、実際にご遺族に話を聞くと、「相続が発生するまで仲がよかったのに、遺言の内容を見た途端に豹変した」ということが多いようです。故人もそこまで想像できなかったのでしょう。

実際には、自筆証書遺言の場合は遺言執行者まで明記されていないことも多いので、できるだけ公証役場に行き、公証人のアドバイスを受けながら遺言執行者の指定まで含んだ公正証書遺言を作成してもらうようにしておくべきでしょう。

「自己防衛」のためにも相続、遺言書については知識を備えておく

親と遺言書や遺言執行者について話をするタイミングは難しいでしょうが、親が健康な状態であり、できるだけ若い年代のときにしておくほうがスムーズに話が進むと思います。

ご本人がまだ元気で、自分の死をまだ現実視していないときに、ずっと先の話として、お友だちの事例などをあげながら遺言書や遺言執行者の話をしておくのがよいのではないでしょうか。

私も遺言の執行者になってくださいと頼まれることがよくあるのですが、相続人のいない方の場合はともかくとして、意外にもほとんどの方が子どもさんなどの相続人がいる方なのです。

親族が信頼できないというよりは、すべての相続人を納得させられるだけのリーダーシップのある相続人がいない場合や、身内のひとりが執行者になると周りからひいきされていると思われる可能性があるので、あえて執行者を第三者にすることで、相続人の中に不満が出にくく不仲になりにくいだろうという思いもあるようです。

ちなみに、私が依頼された場合は、弁護士や司法書士などを紹介させていただいておりますので、私がお受けすることはありません。

いずれにしても、相続人になる立場の方が、自分はだれの遺族になる可能性があり、相続人となるのかを確認しておき、遺言書や遺留分、遺言執行者についての知識を身につけておくことは、将来の相続における自己防衛でもあり、「親家片」の準備にもなるわけです。

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越し®」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/