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連載 パナホーム株式会社 リフォーム技術部 水口努さんが伝授!「親家片世代リフォームのツボ」第4回 浴槽での事故、原因と対策は?

高齢の親と生活をともにするうえで浴室のリフォームを行う場合、手すりや床の段差をなくすバリアフリーなど、転倒を防止するための設備を整えるケースは多いはずです。ところが浴室には、まだ配慮すべき箇所があると水口さんは言います。浴室での事故を防止するために、気をつけておきたいところとは?

現代的な浅い浴槽・昔ながらの深い浴槽、どちらがいい?

昔の浴槽は真四角で深く、足を曲げて湯につかるタイプのものが多かったが、最近のものは「またぎ」の部分が浅くなっていて、形も縦長に変化。浴槽のなかで足を伸ばせ、寝るような姿勢をとれるものが主流になっている。“広々した浴槽で、ゆっくり疲れを癒せる”といった利点もあるが、高齢者配慮という点においては注意が必要だという。

「浴槽の出入りに関しては、またぎの部分が深いと高齢者にとっては大変なので、浅いほうがラクだし危なくないのですが、縦長の浴槽の場合、湯につかっているときに、つるっと足を滑らせてしまう可能性があります。昔の浴槽は狭いので、足が必ずつっかえていたのですが、縦長の浴槽の場合、足止めができず溺れてしまうことがあるのです」

高齢者の浴槽内での事故を防止するポイントとなるのが、フランジ(縁)と浴槽内ベンチだ。フランジとは浴槽の縁のことで、最近は浴槽の角部分のフランジの面積を、広くとっているものが多い。実はこのフランジ、若い世代では気づかない用途がある。

「面積の広いフランジの場合はそこに腰をかけることができ、座りながら壁に取り付けられている手すりを持ち、浴槽に腰を落とせるので安全です。浴槽から出るときも、一度腰をかけてからなので、体への負担が減ります。

また、浴槽内ベンチ(ステップ)は、半身浴やお孫さんと一緒に入浴するときに役立つだけはなく、もし浴槽内で溺れそうになったとき、そこで足がつっかえるので非常に助かるんです。もし何かの発作が起きて溺れそうになったときも、そこで足止めができれば、助けを呼べるかもしれません。リフォームをされる際は、浴槽内の滑り止めとともに、ぜひ取り入れてほしいと思います」

急激な温度差で起こる「ヒートショック」。昔はなかった!?

浴槽内や洗い場での事故のほかに、「お風呂」「高齢者」というキーワードで思い浮かぶのは「ヒートショック」ではないだろうか。気温が下がるころになると、毎年この言葉を耳にするが、実はヒートショック自体、昔はあまりなかったのだという。

「昔の建物は、断熱に対してほとんど対策をとっていませんから、冬になると家じゅうが寒かったんです。リビングも当然寒いので、はんてんを羽織ったり衣類を着込み、こたつに入っていたわけです。ちなみにそのときの室温は、10℃に届きません。そんな寒い部屋にいるわけですから、浴室や脱衣所でヒートショックが起こることも少ないのです。しかし現代は真冬でも、リビングは17~18℃くらいの快適な室温になっていますから、10℃くらいの浴室や脱衣所で、ヒートショックが起こりやすくなってしまうのです」

リビングを暖めることが常識となった現代では、その変化したライフスタイルにあわせ、居室だけはなく、廊下や洗面所、浴室などすべてに策を打つべきだと水口さんは言います。

「浴室に関しては、浴室暖房やまほうびん構造で保温ができる浴槽など、浴室そのものを暖める方法はいろいろとあります。しかし問題なのは脱衣所や洗面所です。リビング同様、すべてのエリアの室温を保つ対策をとるのが理想ですが、そうするためには、脱衣所だけなどピンポイントではなく、家そのものの断熱性を上げることが必要になってきます」

家の断熱性を上げるためのポイントとなる箇所はどこか。これはまた別の機会にうかがう。

(第5回へ続きます)

取材・文/長澤幸代

 

パナホーム水口さまプロフィールナホーム株式会社 リフォーム技術部 チーフマネージャー 水口努さん

1988年松下電工株式会社(現:パナソニック)入社。
キッチン・バスなど住宅設備機器のデザインを担当。2004年より中国でパナソニックの内装業を立ち上げ、素敵な空間づくりで中国人の心をつかむ。2013年4月よりパナホーム株式会社においてリフォーム部門の設計を担当。 
パナホーム株式会社 http://www.panahome.jp/

 


2015/05/17 | キーワド: , , , , | 記事: