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主婦弁 澤田有紀の「親・家・片」法律コーナー 第10回 ~認知症の親のお金をめぐり裁判に 前編~

認知症になった親のお金の権利、
誰のもの?

仕事ならともかく、日常生活の中での出費など、細かくお金の管理をする習慣がある人は少ないと思います。自分のお金なら何に使ったのか忘れてしまっても問題ありませんが、親のお金の場合はそうはいきません。

認知症の症状が出始めて、ひとりで暮らすのが大変になった母親の世話を数年間していた長男のAさんは、母親を高齢者施設に入居させるために、母親の住む家を売却し、代金の一部を施設の入居一時金にあてて、残りのお金を管理していました。

一方、妹のB子さんは、兄が行った家の売買や施設の選定に疑問を持ち、お金の管理をこれ以上兄にまかせられないとして、家庭裁判所に成年後見を申し立てることに。その後裁判所が弁護士を後見人に選任しました。

 

するとすぐに、後見人の弁護士はAさんに家の売却代金の残額など、母親の財産の引き渡しを求めてきました。Aさんは母親の了承を得て、売却代金の中から自分の息子の大学の入学金を出していましたし、これまでに母親に頼まれて買った食品や日用品などの代金を立て替えていて、それが相当多額になっていたことから、家の売却代金で精算してもらうつもりでした。
それが突然、後見人から残額をすべて引き渡すように求められ、頭を抱えてしまいました。

 

何に使ったのか説明できず……ついに裁判に

Aさんは母親の財産を管理していたわけですから、何にいくら使ったのか、母親のためにどれくらい使ったのかなどの明細を、領収書などの資料とともに説明できなければ、法的には預かったお金を全部引き渡さなければなりません。

息子の大学の入学金も母親が了承していたとはいえ、母親は認知症になっていたので、学費を援助することについて判断能力がなかったと言われれば、そのお金も返さなければいけません。

Aさんはそれらについて合理的な説明ができず、ずるずると回答を引き延ばしていると、後見人から財産の引き渡しを求める裁判を起こされてしまいました。

(後編へ続きます)

 

 

澤田先生の法律事務所 弁護士法人みお綜合法律事務所 http://www.miolaw.jp/

sawada澤田有紀 
弁護士。弁護士法人みお綜合法律事務所代表。奈良県生まれ。1985年大阪大学文学部英文科卒業後、商社勤務後エレクトーン講師に。阪神淡路大震災をきっかけに、「何か人の役に立つことがしたい」と一念発起。弁護士を目指す。1回で司法試験に合格し、2000年に弁護士の道へ。専業主婦から弁護士になった「主婦弁」として各メディで活躍中。主な著書に『人生を変える!3分割勉強法』(祥伝社)、『カード&住宅ローン危機』、『相続でもめないための遺言書』『どうする?親の相続』(ともに主婦の友社)など。

 

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