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遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」 第33回 ~実家のお墓はどうする?

お墓を改葬(移動)する場合には
費用も時間もかかるケースが

空き家になった親の家を片づけようというときに、先祖代々引き継がれてきたお墓の問題で頭を悩ませている子どもさんも多いことでしょう。

 

たしかに、親が亡くなったり、住まなくなった家を片づけてしまうと、その地に訪問する機会はほとんどなくなり、墓参りに行けなくなってしまっているケースが多いのです。

だれもお墓参りに来なくなり、放置され無縁仏になってしまっているお墓が全国的に大量にあり、寺院や墓地の経営者にとって悩みの種となって、無縁墓問題として新聞などにも取り上げられています。

 

そのお墓ですが、「お墓は買ったもの」という感覚でいる方も多いと思います。しかし基本的にお墓は個人が所有することはできません。したがって、お墓は不動産のように売すすることはできないのです。

 

寺院や霊園などとは「永代賃借権(永代使用権)」という契約になっている場合が一般的です。先祖代々のお墓が古いお寺にある場合は契約の形にはなっていませんが、管理料が卒塔婆供養のためのお布施などに代わるだけで、基本的な構図は同じです。

そうした管理料やお布施を払い続けていれば半永久的にお墓は使用できるわけですが、滞納が続けば無縁仏になるのが大方の流れです。放置されて荒れ果てたままのお墓が増加しているのはそのためです。

 

お墓の売却はできず、お墓を維持するためには管理料を払い続けなければならない。とすれば、思いつくのはお墓を移すことですね。それを改葬といったりしますが、これもなかなかやっかいなのです。

 

お墓を移す場合、元々のお墓があるお寺に対しては、お墓を返却するということになるのですが、「抜魂供養」といった名目の費用を請求されることもあります。また移転先である寺院や霊園に新たに納骨しようとすると、「開眼式」などと称して費用がかかることもあります。手間も費用もかかる、というわけです。

 

改葬先は自宅近くの墓や納骨堂にする人が多いのですが、近年は「散骨」といって、海や山などに粉末状にした遺骨を撒くという納骨手段を希望する人も増加傾向にあります。
いずれにしても、現在まで使い続けていたお墓を閉めて改葬する場合は、市役所や区役所に行き申請をして「改葬許可書」を発行してもらう必要があります。

 

実は、納骨の方法は国で定められているわけではない

 

現在、法律で明確に決められているのは、火葬場への持ち込み段階までです。正式な死亡診断書を役所に提出することで、「埋火葬許可証」を受領し、それを火葬場に示さなければ絶対に火葬は受け付けてもらえません。

 

基本的には、その火葬場に持参した「埋火葬許可証」に、火葬場は「火葬を執行したことを証明する」といった裏書をしてくれます。それが「埋葬許可証」になり、納骨の際に、墓地や寺院に提出する、というのが一連の流れです。

 

ただし、火葬後は遺骨を拾う「骨揚げ」をして容器に移すわけですが、その後の処理については決まりがありません。
つまり国で定められた定義があるわけではなく、法律上で決められた納骨の方法というのはないのです。

 

遺骨の処理はそれぞれの判断でできるというわけです。もちろん、どこにでも埋めたり撒いたりしていいわけではありません。ある程度の限られた場所でないと罰せられることもあります。

 

納骨やお墓に対する考え方はさまざまですが、最近、都市部で目立つのは、納骨堂を希望する方が増加していることです。公営のお墓の空きが少なくなって抽選が当たらないという現状と民間の墓地が高価になったことも背景にあります。

 

お寺の境内などにある冷暖房完備のビルのような建物ですので、交通の便がよく雨の日でも墓参りができて、草むしりや掃除の手間もかからないというメリットがあり、最近は人気になっています。
ちなみに、納骨堂の多くは30年前後の占有権を購入し、それ以後は合同墓に入るという契約が多いようです。

 

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越し®」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/