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スッキリ生活アドバイザー宮城美智子の「片づけ上手は老い上手」 第34回 ~50年暮らした家をたたみ、マンションでシンプルな生活を開始 後編~

 「ためるのではなく使い切る」ことを目的に
収納方法を工夫
石川弘子さん・82歳

80歳のときに、50年間住んでいた自宅をたたみ、マンションでのひとり暮らしを決めた石川さん。宮城さんのアドバイスを受けつつ、片づけを開始しました。

 

もともとモノに執着しないほうなので、あまり迷わず持ち物を減らすことができました。私や娘の結婚式の写真なども、1枚だけ残して、あとは処分。写真は数えるほどしか残しませんでした。

キッチンのモノも、ほとんど持っていかないことに。炊飯器だって捨てました。マンションは商業地域にあり、周囲にはレストランも豊富なので、すべて外食にしようと思ったのです。レストランにひとりで入って食事するのも平気ですから。

 

仏壇は、お寺さんでお焚きあげをしてもらい、小さなものに買い替えました。ちゃんとお祀りすれば、大きさは関係ないはずです。

 

大量の持ち物を手放すことを決めた私に、まわりの方は「ずいぶん思いきりがいいわね」と驚いたように言います。でも、思いきりよく処分しないと、年をとってからの引っ越しはできないですよね。

 

「石川さんは、『処分する、しない』の見きわめが、とてもスピーディー」と宮城さん。年齢を重ねると判断力の衰える人が多いなか、そんなことはまったくなかったそう。「誰もがこのようにモノにこだわらずに手放せたらいいのにと思いましたし、見事に整理なさった石川さんに私は尊敬の念を抱きました」。

 

引っ越し後は、宮城さんに片づけが苦手な私でもできる収納のコツを教えていただいたんです。何よりも「便利だな」と感心したのは、モノの収納場所が一目瞭然のラベリング。どこに何が入っているのか、張ってあるラベルを見ればすぐにわかります。以前は、必要なモノが目の前にないと探すのが面倒で、すぐに買っていました。

 

そのため、引っ越しの際は、ホチキスが、あちこちから5個も6個も出てきたり。今は、置き場所が特定されていてラベルも張ってあるので、探すことはないし、すぐに買ってしまうこともありません。もうモノを増やさないように、景品やおまけも受け取らないことにしています。

 

それから、タオルの使い方も変えました。タオルが大好きなので、デパートできれいなデザインのモノを見るとすぐに買ってしまい、その結果、使いきれないほどたまっていました。それらを引き出しにギュウギュウ詰めにして、満遍なく使うため、どれもなかなか傷まないから処分できない。

 

これからは、何枚かを引き出しの手前に収納して徹底的に使い、それが古くなったら処分して、また別の何枚かを集中して使う。そんな使い方を、宮城さんに伝授されました。洋服も同じです。ブラウスでもTシャツでも、「これはこの夏限り」と決めたモノを、なるべく数多く着て、夏の終わりにヨレヨレになったら、もう惜しくないのでポンと捨てることに。モノは、“使いきること”が大事なんですね。

 

さらに災害が起きた場合のことを考えて、非常用の水や食糧を備蓄しておくことも助言されました。「最低でも2週間分」と言われたので、念のために1カ月分の水やレトルト食品を常にストック。高層階に住んでいるので、ライフラインがストップしたらエレベーターも止まり、簡単に外には出ていけません。娘は2駅隣の地区に住んでいますが、あまり迷惑はかけたくないから、いざというときの備えもしているんです。

 

 

「服やタオルなどは、新しいモノでもどんどん使って、それが古くなったら次の新しいモノに入れ替えることが大事。ところが、これができない方が多いのです。新しいモノを買ったり、もらったりすると、使わずにため込んでしまう。それでは、モノが増えるのは当たり前です」と宮城さん。
非常用の備蓄品については、レトルトのようなモノには賞味期限があるため、備蓄品も少しずつ使いながら、減ったら新しいモノをたすというように入れ替えていくのがポイントだそう。「家の中のモノを循環させていくことも大切です」。

 

先日、「脚を治して、またクラシックのコンサートに行けるようになりたい」と思い、手術をしたんです。45日間の入院中は、いたれり尽くせりでお世話していただけるので、すべて人任せの生活でした。退院後、気がつくと、以前に比べて人の名前が出てこなかったりと、物忘れがひどかった。やはり誰かに頼りきってはいけませんね。頭を使って自分の暮らしを整えていくことは、何歳になっても大切だと痛感した経験でした。

 

ここに越してきて3年目ですが、マンション暮らしは気楽で、私に合っていると思います。住まいが整理されてすっきりすると、頭の中も片づくのか、今、自分がするべきことが見えてきました。今年いっぱいは、術後の脚のリハビリに励むのが、私のするべきこと。脚を治して、また素敵なクラシックの演奏を聴きに行くのが楽しみです。

 

「大事なモノだけに囲まれた楽しい生活を実現するために、不要なモノとはキッパリお別れする。家に残したモノは、しまい込まずにどんどん使う。さらに、いざというときに他の人にもモノの置き場所がわかるように収納しておく。こんな暮らしを実現した石川さんのような人がもっと増えると、幸せな高齢者も増えて、日本は元気になると思うのです」(宮城さん)

 

(第34回へ続きます)

 

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宮城美智子さんプロフィール画像edited宮城美智子 みやぎ・みちこ スッキリ生活アドバイザー、収納コーディネーター

1947年滋賀県生まれ。50歳からアート引越センターに勤務し、主婦経験を生かしてアートエプロンサービス(家庭内の片づけをサポート)の担当部長となる。片づけや掃除の独自のノウハウを構築し60歳で独立。現在はハート引越センターの収納サポートレディ育成のほか、高齢者住宅の収納プランニング、講演活動、テレビ・雑誌などで活躍中。これまで1万人以上の片づけをサポート。特に高齢者の家にあふれるモノの整理をアドバイスし、多くの人から感謝されている。

宮城美智子オフィシャルサイト  http://theworks.co.jp/miyagi/
ハート引越センター http://www.hikkoshi8100.com/