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遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」 第15回 ~親の兄弟に対する相続は?~

「親家片」で覚えておきたいことー
親の兄弟に遺留分はありません

 

毎日のように遺品整理の現場に立ち会っているうちに、「遺留分」という相続用語が、とても重要であるということに気づかされました。皆さんは、すでにご存じかもしれませんが、私は数年前まで特に気に留めることもなく聞き流していました。

 

高齢者のご自宅への訪問相談が増えるにつれ、「私は○×には相続させたくない」といったお話を頻繁に聞くようになり、「遺留分」というものがとても大事なんだなあと意識するようになったというわけです。

 

遺留分について、改めて説明させていただきます。

遺留分とは、ある一定の相続人は、どんなことがあっても「法律で守られている」「最低限度受け取れる相続」という権利です。

 

要するに、いくら故人が「お前にはビタ一文やりたくない」と公正証書遺言に書き遺したとしても、名指しされた人が相続人であり、かつ、その相続人が相続放棄をしない以上、必ず相続できる権利の割合です。最大では、相続財産の50%の相続権が保証されています。

息子には相続させたくないとお父さんがいくら遺言書で示していても、息子が親の死後に自ら相続放棄をしない限り、息子の権利が消えることはありません。

 

事前相談の場面でこの問題に直面したことがあります。依頼主は高齢の婦人でした。

「息子には相続放棄をするようにいいふくめています。話は終わっています。すでに、相続を放棄する旨を書いた書類に署名捺印をさせています。実印で捺印してもらいましたから大丈夫です」

 

せっかくそこまで準備万端にしたのですが……。

「実は、その書類はすべて無効です」

と、伝えなければならず、私自身が心苦しくなりましたが、そのようなケースが結構あるのです。

 

相続権は身内が亡くなったことで、法定相続人になってから発生するものなので、遺族でも相続人でもない段階での相続放棄は、一切無効になるのです。

 

「親家片」でも特に相続が発生すると、突然、故人の兄弟姉妹があれこれと口を出してくることがよくあります。

しかし、故人の兄弟姉妹の場合は、最低限の相続分である遺留分はありません。

 

遺言書で「兄弟姉妹にも相続させる」と書いていない以上、一切、遺産を分ける必要はありません。要するに、“遺留分”が口うるさい故人の兄弟からあなたの相続財産を守ってくれるというわけですね。

 

遺留分を侵害されたら……遺留分減殺請求を行います

ちなみに、読者であるあなたに遺留分の権利があったとしても、公正証書遺言書に書かれている内容そのものは有効です。遺留分を侵害するような内容が書かれていた場合でも、遺言書の内容通りに実行に移されることになります。

その場合は、「遺留分減殺請求」を家庭裁判所に請求して取り戻すという手順が必要になります。

 

遺留分減殺請求とは「遺留分を侵害された者が、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件の返還を請求すること」なのですが、遺言内容を停止させたり、変更させる権利ではありません。たとえ遺留分を持っていたとしてもそれだけで安心しないでくださいね。

 

ややこしいので、もう一度いいますが「遺留分」は「遺留分減殺請求」を家庭裁判所に請求して取り戻すことができる権利があるということであり、まず、遺言書の内容はその通り実行されますので、そのあとに自分の取り分を取り戻すための権利ということです。ですので、遺言が実行されていないと家庭裁判所に「遺留分減殺請求」を請求できないということになるのです。

要するに、あなたに遺留分があっても、何もしないと遺言通りに相続手続きは完了して、あなたの手元には一切戻ってくることはないということです。

 

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越し®」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/