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遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」 第10回 ~”争族”を避けるためにも遺言書は大切です~

遺品整理の現場で知る「遺言書」の大切さ!

「兄弟は他人の始まり」という言葉は、皆さんご存じですよね。

とても嫌な言葉ですが、昔から広く使われているように、相続時には遺産を巡る兄弟姉妹争いが起こりやすく、その争いが元で、以後、一切の付き合いがなくなってしまったという方がとても多いのです。

 

「うちの兄弟ではまず相続争いなんて発生しないよ。だってそんな遺産なんて呼ばれるような大金なんてないから」

 

たしかに、このご遺族には莫大な遺産があったわけではないのですが、私が遺品整理に出向いたころには、兄と弟はことごとく意見が対立していました。金銭の相続争いではなく、遺品整理争い? とでもいうのでしょうか。あるいは単なる遺族の喧嘩? だったのかもしれませんが。とにかく葬儀や相続のときは普段以上に感情的になりやすく、深刻な争いに発展することも多いようですので注意してくださいね。

 

争いが起きるのは「財産」ではなく気持ちの問題!?

 

最高裁判所の「司法統計年報」(平成23年)が興味深いデータを示しています。遺産分割の争いによって調停や訴訟になってしまうケースの大半は、高額な相続財産の場合よりも、少額な相続財産を巡ってのほうが多いという事実です。

5000万円以下の遺産分割でもめている件数が全体の76・5%を占めています。驚くことに、相続税が発生するはずもない1000万円以下の遺産で争う件数に限っても3割を超えるのです。

 

相続ならぬ“争族”が起きるのは、金額の多寡ではないということでしょうか。親が生きているうちはお互いに我慢できていたものが、親が亡くなってしまうとダムが決壊したかのように一気に溢れ出す。「気に入らない!」という感情や「不公平だ!」という思いが湧き起こり、お互いに意地を張り合ってしまい、後戻りのできないところまで一気にいってしまうのでしょう。

 

親が亡くなり親の家を片づけることになった場合、まず確認しなくてはいけないのは亡くなった親の希望です。故人の希望がどうだったかが遺言書などではっきりしていれば、たとえ複数の相続人がいたとしても争いになる可能性は少なくなります。

 

逆に、遺言書がない場合は、子ども同士の争いだけでなく、配偶者や親の兄弟までも巻き込んでしまい、収拾がつかなくなってしまうことも多いのです。

 

ですから、親が遺言書を事前に書いてくれているかどうかは、とても重要なのです。

私は相続のプロではありませんが、遺品整理の現場を数限りなく見てきた者として、より実践的な相続についても少しアドバイスさせていただきます。

 

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越しR」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/