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掲載後、体験者を中心に予想以上の反響  読売新聞「親の家 片付ける」連載記事  担当記者が見た、感じた「親家片のリアル」 第3回(最終回)~本当の問題は片づけではない~

昨年8月に読売新聞に連載された「親の家 片付ける」。100通以上寄せられた体験談や生の声から、担当記者が感じたもの、見たものは何だったのか。そこには「片づけ」では済まない奥深い問題があった。

 

親家片問題の根底にあるのは「親子関係」

 

親家片は、親世代の「さびしさ」「孤独感」が深く関わっていると話す宮木さん。

近所から小売店が消え、車がないと足を運べないような遠くのショッピングモールまで買い物に出かけなければいけない、いわゆる「買い物難民」の取材をしたときも、同じことを宮木さんは感じた。

 

「大きなキャベツと牛乳を抱えた、買い物帰りの90歳くらいの女性がいらっしゃって、許可をもらい、家まで同行させてもらったんです。体がふらふらしてしまうほど、大量の食料を買い込むなんて、きっと家に何もないからだと思い込んでいましたが、違いました。冷蔵庫の中には食べ物がぎっしり詰まっていたんです。

 

たくさんあるのに買い物に出かけてしまうのは、『私ひとりしかいない』『頼れる人がいない』といったさびしさや不安があるからなのでしょう。高齢でひとり暮らしの孤独感が、モノをためてしまうことに表れているのかもしれません。しかし、子世代からすると『なんで?』と不思議で仕方ない。これは親家片問題と共通しています」

 

親と同居するために実家の片づけをしようとしたが、実家は必要のないモノだらけ。自分たちの引っ越しが進まず、親を怒鳴りつけてしまった子世代。

 

同居するための家を新築したものの、片づけをめぐり仲違いをしてしまい、一緒に住むどころか、絶縁状態になってしまった親子。

 

読売新聞には壮絶な親家片体験がたくさん寄せられた。

 

親家片は結論の出ない問題

 

親子関係が希薄になり、別々に暮らすことが多くなった今、親自身がどのように生活しているかを、子世代はあまり知らない。

 

「子育てでは、親子のコミュニケーションが大事だとよく言われています。それはもしかすると親子が年を重ねても同じで、ずっと大切なことに変わりないのかもしれません。

 

月に1回でも、半年に1回でも、親子がしっかり話し合って、意思の疎通が図れているなら、片づけをしていても大きくぶつかりあうことは少ないし、ぶつかっても修復できると思うんです。意思疎通がなくて、しかもぶつかったままだと、10年たってもイヤな思い出として残ってしまうのでしょう」

 

「親家片はおそらく、結論が出ない問題なのかもしれません」と宮木さんは言う。親家片は、片づける行為そのものよりも、心の問題が大きく影響しているからだ。

 

子世代の目線を中心に語られがちな親家片だが、親世代のリアルな声を聞くことで、子世代の取り組み方も変わるのかもしれない。

 

(終)

 

取材・文/小山まゆみ

 

宮木優美さん
読売新聞東京本社 編集局生活部 記者
2003年に読売新聞東京本社に入社。青森支局、川越支局で、地域で暮らす人々を取り巻く問題を取材。2008年からは生活部で、衣食住に関する話題や、家族、親子をめぐる問題、働く女性が直面する問題などを取材している。