専門家に聞く

遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」 第2回 ~遺品整理業者の存在意義~

専門家が入ることで、親家片がズムーズに進むという一面も

遺品整理業はいまや、社会的にも必要なサービスとして認知されてきました。

遺品整理業者を名乗る会社や個人は数百にも及ぶのではないかと思うほど、ホームページやチラシなどを頻繁に目にします。

 

それだけ遺品整理業という職種が社会的に認知されてきたということではありますが、遺品整理を他人に任せることが当たり前になってきた半面、家族の関係が稀薄になっているのかと思うと寂しさも感じるものです(自分でつくっておいていうのもなんですが……)。

 

しかし、ご遺族から聞かせていただいたさまざまなお話から、単純に遺品の整理を代行するだけの便利なサービスとしてだけでなく、遺品整理業のサービスには意外な存在意義があると気づかせていただきました。

 

まず、しっかりした遺品整理会社を利用することが、親族を説得する際の材料になっているということです。

まだ遺品を片づけることに抵抗のある親族に対して、ごみ屋さんではなく遺品整理の専門業者を利用すると説明すると納得してもらえた、というお話を何度もお聞きしました。

 

子世代だけではなく「親」自身の気持ちも軽くなることがある

 

身内だけで遺品整理をしていると喧嘩になったり、その後仲が悪くなったりするケースがありますが、第三者である専門家がそばにいたことで作業がスムーズに進み、兄弟間の緩衝材の役目を果たしてくれましたとおっしゃる方もいました。

また、遺品を残すか廃棄するか判断に迷ったときに、客観的なアドバイスがもらえるので決断できましたといわれたこともあります。

 

すべてのサービスを一括で受けてくれたので、時間的にも値打ちがあったというご遺族も多いのです。

そして、ご遺族だけではなく、高齢者ご本人からも、遺品整理業者の存在そのものに対して、価値を感じてもらっているのです。

 

自分が死んだあとに、自分の私物の片づけを専門家にお願いできることで、憂鬱だった悩みが解消されましたと、手紙をいただくことも多いのです。

このような思わぬ存在価値が派生していることは喜ばしいのですが、それほど今の社会には不安が付きまとい、身内なのに心底信頼できないという方が多いのには、寂しくなりますね。

 

かなり昔の話になりますが印象的だったのは、「端数は切り上げで!」といわれたことです。

ある日見積もりにお伺いした部屋の中は、私どもの仕事が全く必要ないほどきれいに片づき、梱包されていました。

私はご遺族に「ここまできれいにされていると、故人さまも喜ばれていると思いますよ」と申し上げました。

 

すると、その方は「わざわざ来てくださってありがとうございます。ほんとうに申し訳ないですね」と何度も私におっしゃるのです。そして見積もり金額を提示したときに、びっくりするようなことをおっしゃったのです。

「その端数は切り上げてください」

私は、端数はサービスしようと考えておりましたので、この言葉を聞いたときは聞き違いとしか思えませんでした。

 

しかし、何度問い直しても切り上げてくれとおっしゃるのです。もちろん切り上げはできませんので、値引きなしでお受けしたのですが、なんども「人の嫌がる仕事なのに、こんな仕事頼んでごめんね、ごめんね」とおっしゃっていた記憶があります。私どもは決して人が嫌がる仕事だとは思っていませんが、そのように評価してくださっている方がいたことは、今まで頑張ってこられた要因のひとつだと思っています。

 

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越しR」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/