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遺品整理のプロ 吉田太一の「親家片のススメ」 第1回 ~遺品整理専門会社「キーパーズ」の誕生~

2002年に日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ」を立ち上げた吉田太一さん。「天国へのお引越し®」をキャッチフレーズに、これまで全国1万3000件以上にわたり、遺品整理サービスを提供してきました。

映画「アントキノイノチ」のモデルとしても知られる吉田さんによる「プロ整理業者の親家片アドバイス」が始まります!

遺品整理専門会社「キーパーズ」は
こうして誕生しました

遺族にとって親の家の片づけにともなう遺品整理は、とても意味のあるものです。

遺品が語る故人の生きざまからはさまざまな学びがあり、故人からの最後のプレゼントだと思いますので、私はできる限り遺族が自らの手でするのが望ましいと考えます。

 

しかし、時間や精神的にゆとりのない遺族や、故人との関係があまりよくなかった遺族にとってみれば、かなりの負担となってしまうのも事実です。

突然、親を亡くして悲しみに暮れている遺族が、しなくてはならない死後の諸手続きがたくさんあります。

 

火葬の手配や通夜葬儀の手配、役所への手続きや届け出、納骨の手配など、あまり経験のない遺族にとってみれば、睡眠不足になるほど忙しい日が続くのです。それが終わると、相続の手続きが始まります。

相続の手続きには、一定の期間内に手続きをしなくてはならないものがあり、遺族がゆっくりと落ち着いて亡き親を偲ぶ間さえないのです。

そんな時期に遺品整理という、これまた大変な出来事に直面するのです。

 

あるとき、このように慌ただしい状況の中で、遺品の整理をすることが非常につらいというご遺族にお会いする機会がありました。50代の姉妹でした。当時私は全国初の「ひっこしやさんのリサイクルショップ」を運営する引越センターを経営しており、依頼を受けて見積もりに出向いたときのことです。

「タンスとソファは私の自宅、冷蔵庫と洗濯機は妹の自宅に送ってほしいのです」

 

室内にはまだ大量の家財道具が残っていました、私は疑問に思って、その姉妹にお聞きしました。

私「そのほかの家財道具はどうされるのですか?」

姉妹「今から処分業者やリサイクルショップを探すのよ……」

私「それならすべて私にお任せいただけませんか?」

姉妹「本当に!? このときこのタイミングですべて引き受けてくれる人は神様に見えるわ!」

“神様”といわれて一瞬何をいっているのか理解できませんでしたが、よくよく室内を見渡すと遺影と骨つぼが目に入りました。そのときになって初めて、単なる引っ越しではなく、亡くなった父親の遺品整理だったと気がついたのです。

 

「遺品をごみ扱いしたくない」という遺族の思いを大切にしたい

 

それがきっかけとなり、遺族になり代わって遺品の整理を代行する専門会社が必要なのではないかと考え、2002年に日本初の遺品整理専門会社を設立したのです。

 

当初は、

・形見品や貴重品を捜す

・荷物を分別して片づける

・リサイクルできるものは買い取る

・形見分けの品を運ぶ

・空になった室内を清掃する

 

という、単純な作業だけを一括でお引き受けすることで、遺族の負担を軽減できるサービスとして始まったこの会社でしたが、遺族の話をたくさんお聞きし、遺品整理の意味がそれだけではないと気づかせてもらいました。その気づきから、提供するサービスの幅を広げてきたのです。

 

生活スタイルも変化してきました。少子化が進み、未婚の人や離婚した人も多く、年齢にかかわらず単身世帯が激増しています。このような時代背景の中で、特に、ひとり住まいの方が亡くなったあとの家の売却や、賃貸契約の解除、遺品の整理が遺族にとってお葬式以外にしなくてはならないこととして、新たに発生したわけですね。

 

私どもにご依頼いただくご遺族は、仲がよかった親子関係ばかりではありませんが、多くが最後くらいちゃんと送ってあげたいという気持ちをお持ちです。遺品はごみではないという、私どもと同じ考えを持たれている方が多いのです。

 

たしかによく考えてみると、遺品整理会社を創業する前にも、遺品整理という認識はありませんでしたが、身内を亡くしたご遺族からの依頼で片づけのお手伝いしたことは何度もありました。

しかし、その当時の処分の方法としては、便利屋さんかごみ屋さんなど単純に遺品をごみとして捨ててもらう業者に依頼するしかなかったのです。

 

そこで、遺品をごみ扱いしてほしくない、最期くらいしっかりと片づけをして送ってあげたいというご遺族のために、選択肢のひとつとして、「遺品はごみではない」という考え方の遺品整理専門サービスを創ろうと考えたのです。

 

吉田太一(よしだ たいち)
1964年生まれ。大阪府出身。日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ有限会社」代表取締役。独居老人の増加に伴い身内の遺品の整理で困っている人が多いことに着目し、「天国へのお引越しR」をキャッチフレーズとした同社を設立。年間1500件に及ぶ遺品整理サービスを提供するほか、年間50回以上の講演活動、メディア取材で全国を飛び回る日々。まさに「親家片」のエキスパート。著書は『遺品整理屋は見た!』『孤立死 あなたは大丈夫ですか?』(以上扶桑社)、『私の遺品お願いします。』(幻冬舎)ほか多数。さだまさし原作の映画『アントキノイノチ』のモデルとしても知られる。
キーパーズホームページ http://www.keepers.jp/