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住まい方アドバイザー 近藤典子さんの親の家の片づけ 第5回(最終回) ~写真の整理をすると、家族の歴史が見えてくる~

写真の思い出を語り尽くし、次の世代へつなぐ

 

義母の認知症が出始めた頃、近藤さんは、そろそろ写真の整理をしておかなければと行動にうつしている。

 

「義母が元気なときに部屋へ行って「お義母さん、写真見せて!」とたくさんあった写真をバーンと出して、写真の要・不要を振り分けるためにいろいろと話をしていたら、義母の雑談が止まらないんです(笑)。聞いているうちに、ああ、そういう歴史があったのか、なるほどそういうことなのか、と思わされることがたくさんありました。

 

それでこう言ったんですね。『お義母さん、大切な写真だけこうやってまとめておくので、ときどきこれを出して、見てね』って。そうしたら少しでも認知症のリハビリになるかもしれませんよね。『昔の事をまた私たちに聞かせてくれたり、孫が遊びに来たら教えてあげてね』といい写真だけをピックアップして、それをジャンル分けしました」

 

こうしながら、義母にとってあまり思い入れのなさそうな写真は、少しずつ捨てた。けれども捨てるとは言わずに「あんまり見ないね。いらないね」と義母と話し合いながら処分をしたという。

 

「実家の母と一緒に写真整理をしたときもそうでしたが、年をとるほど昔のことをよく覚えているものでしょう? ですから、一緒に写真を見ながら、これはどうだったああだったと、しゃべりたいだけしゃべってもらうんです。不思議なもので、しゃべり尽くしたら、その写真になんの思いもなくなってしまったりするんです(笑)。

 

私は、そうねそうねと言いながら必要な事を書き留めるんです。なぜ書き留めるかというと、それは家族の履歴書だから。親がどうやって生きてきたか、子どもは知っているようで知らないんですよ。『これは履歴書やね、孫に残さないと』と言うと喜んで写真の整理に協力的になってくれました。それで、いい写真だけをアルバムにしました」

 

義母の通夜で多くの写真は親族の手に

 

やっておいてよかったとしみじみ思ったのは、義母の通夜のときだったと近藤さんは言う。

 

「会ったことのない親戚がたくさんいたんですけど、写真を見ながら義母にいろいろと聞いていたから、お通夜で初めてお会いした方でもこの人だろうというのがわかるわけです。『初めてお会いしましたけど、義母から聞いていました』と言って写真を見せたら、とても喜んでくださいました」

 

お通夜ではコルクボードをいくつか購入して、「義母の歴史」「義母と一緒に暮らしてからの歴史」「義母と親戚の歴史」の3つのテーマに分け、写真を展示した。

 

「学芸会みたいで恥ずかしいと思いましたけど、みなさんそれをご覧になって盛り上がりましたね。写真のところで立ち止まって、熱心に見てくださって。これ私、これは○○さんね! って。お葬式が終わってからもみなさんがうちに集まる事になり、義母の話や昔話に花が咲きました(笑)。写真を持って帰りたい方はどうぞと言ったら、手元にはほとんど残りませんでしたね。残ったのは義母のにこやかな遺影の写真と、子どもや孫が写っていたり、私たちが写っているものくらい。アルバムにしても1冊に満たない枚数で、私はそれを義母の孫である甥っ子と姪っ子に渡しました」

 

その甥っ子と姪っ子は、近藤さんの家に来ると、誰に言われるまでもなく、必ずお線香をあげるという。

 

「思い出というのは、思いを出すと書きますよね。それはあとに託していくものだったり、自分の思いを出してくるものだと思うんです。

逆を言えば、家の中のどこかにしまい込んでいつでもさっと出せないものには、思い出が宿りません。とは言え、いくら本人に言ってもわからない場合もあるでしょうから、そういう工夫をしてあげるといいと思うんです。親が生きているうちでいいんです。生きているからこそいろいろ聞けるし、ちょっと展示すると親もきっと喜んでくれます。もしかしたら不要な写真も一緒に処分してくれるかもしれません。思い出の物はいろいろとあると思いますが、写真に関してはこんなアプローチもいいのではと思います」

 

 

(完)

 

近藤典子さんのお話、次回からは具体的な整理術をお届けいたします!

 

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撮影/森安照 取材・文/小山まゆみ

 

 

近藤さん プロフィール1edited近藤典子(こんどうのりこ)住まい方アドバイザー、株式会社 近藤典子Home & Life研究所取締役、「近藤典子の暮らしアカデミー」校長

1957年、兵庫県生まれ。2000軒以上の暮らしの悩みを解決し、10人いれば10通りの住まい方があると、住み手にあった近藤流の暮らしを提案。テレビ、雑誌、新聞などメディアや講演会での活動のほか、企業との商品開発やコンサルティング、間取り監修などでも幅広く活躍中。2011年度より小学校、2013年度より高等学校の家庭科用教科書(共に東京書籍)に登場。現在、「住まい方アドバイザー養成講座」の準備中。
近藤典子オフィシャルホームページ http://www.hli.jp/
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