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住まい方アドバイザー 近藤典子さんの親の家の片づけ 第4回~2~3年のスパンで考えることで 気持ちに余裕が生まれる~

安全、快適に過ごすために必要なことはハッキリ伝える

 

新しい住まいのサイズにあわせて、物を処分するか、物が増えて狭くなってもガマンするか。近藤さんは義母と向かい合い、いろいろな話をした。

 

「当初は布団で寝るつもりだった義母が、ベッドがほしいとなって、テレビを持ってきたものより大きなものに買い換えたりしたんですね。日常生活の中で、立ち上がったり座ったりがしんどい様子だったので、じゃあ回転椅子を置こうかと思ったら、置けないんです、狭くて。

 

『ここを通るためには、ここに手をついたほうがいいけれど、荷物があったら手をつけられないよね。だからこの荷物を置くのはやめたほうがいいんじゃない? お義母さんが荷物を置きたいのはわかります。でも狭くて悪いんだけど、7畳で上手に過ごせるようにするから頑張ってくださいね』と言いました。

 

はっきり言えないご家庭もあると思いますけど、私の場合は片づけが自分の仕事ということもあり、言葉を選びながらですが、できるだけ言わないといけないことは伝えるように心がけました」

 

義母の荷物がだんだん減り、2つの家庭がひとつになったのは、引っ越しから2~3年後だったと近藤さんは振り返る。

 

「3年はかかると思っていましたけれど、落ち着くまではしかたないんですね。最初から絵に描いたような生活はないと思っておけば、お互い腹も立ちません」

 

義母の意思がわかるうちに少しずつ準備を始める

 

20年間一緒に暮らした義母は、3年前、天国に旅立ちました。転倒がきっかけで背骨を損傷した義母は要介護となり、近藤さんは働きながら、義妹と一緒に24時間体制の自宅介護を5年間続けた。

 

「義母が亡くなってから物を処分するのは、それほど大変ではありませんでした。

義母の様子に合わせながら、少しずつ準備を始めていましたから。義母は男3人の母親なので全員女性は嫁なんですね。やっぱりどんなに仲良くなっても、私たちに気は使い続けていたでしょう。

 

そこで不要な物を処分してもらう為の対策の1つとして、嫁同士で相談して「ちょうだいコール」をすることにしました。『お義母さんこの帯ちょうだい』『着物ちょうだい』と。そう言われたら、『この子たちは着ないな』と何となくわかっていてもどうぞと譲ってくれました。

晩年、義母は少しずつ認知症が出始めました。しっかりしているときはわかっていたと思います。私たちもそれを感じながら、いらない物を処分する為に折りを見て「ちょうだい」と言い続けました。

 

生前、こんなことがあったそうだ。

 

「動けなくなった義母を病院に入院させるとき『お義母さんこの靴、どうする? 思い出に残しておく?』と聞きました。義母が若いときにはいて、しまったままにしてあった7㎝程のヒールの靴です。だけど歩けない義母に、ヒールがあっても履かないでしょ、とは言いたくなかったんです。だから『お義母さんどうする?』って。『持っていきたかったら、病院の枕元にでも置いて、これをまた履けるように頑張ってみるのもいいと思うよ、どうする?』そう聞いたんです。

 

義母は『いらない』と一言だけにっこり笑いながら言いました。『ほかの靴はどうする?』と聞いたら、それも『いらない』と。どんな靴があるのか、おそらく本人は覚えていなかったのかもしれませんが……。

 

第5回に続きます

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撮影/森安照 取材・文/小山まゆみ

 

 

近藤さん プロフィール1edited近藤典子(こんどうのりこ)住まい方アドバイザー、株式会社 近藤典子Home & Life研究所取締役、「近藤典子の暮らしアカデミー」校長

1957年、兵庫県生まれ。2000軒以上の暮らしの悩みを解決し、10人いれば10通りの住まい方があると、住み手にあった近藤流の暮らしを提案。テレビ、雑誌、新聞などメディアや講演会での活動のほか、企業との商品開発やコンサルティング、間取り監修などでも幅広く活躍中。2011年度より小学校、2013年度より高等学校の家庭科用教科書(共に東京書籍)に登場。現在、「住まい方アドバイザー養成講座」の準備中。
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