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住まい方アドバイザー 近藤典子さんの親の家の片づけ 第3回 ~目に見える形で義母を気づかい、話し合いを重ねる~

荷物に埋もれ、キッチンで寝ることもあった義母

 

義母と一緒に暮らすにあたって、近藤さんは義母にいちばん広い部屋を用意した。

 

「とはいっても義母の部屋は7畳。私たち夫婦の部屋は11畳で、そちらのほうが広いと思うかもしれませんが、ひとりあたりのスペースなら、義母の部屋がいちばん広いんです(笑)。

『お義母さん、3LDKの家を建てたけれど、今度の住まいは7畳の1部屋。狭くなって悪いけれど、その家の中ではお義母さんの部屋がいちばん広いんですよ。収納はこれくらいのものがあるから、そこに入るぶんだけと考えて、引っ越しまでに荷物を整えておいてね』と言いました。

引っ越し屋さんに頼んで荷物を運ぶにも料金がかかりますし、少しでも荷物を整理してくれたらと思っていたのですが、義母は捨てませんでした(笑)。だけどいいんです。家に運んで自分の部屋に置くのだったら、それでいい。じょじょに整理してもらえばいいと思っていました」

 

7畳の部屋に引っ越した当初、近藤さんは義母にこんなアドバイスもした。

 

『お義母さん、何を捨てたらいいのか悩むと思うけれど、そんなときはモノを見直したら少しははかどるかも!

箱に入っているものから見直してみてくださいね。できるだけ箱を開けてみて、たとえば中身が洋服なら一度着て鏡に映してみるといいですよ。何となく着にくかったり似合わなかったりしたら、思い切って処分する! 役に立ってくれない物は、この機会に思い切って処分しましょうね』そう言いました。

お年寄りの場合、箱をたくさんしまい込んでいることが多いんですね。箱の中に何の為にとってあるのかわからないものが入っていたり。箱の中にまた箱が入っていたりして、まるでマトリョーシカ状態(笑)。
義母の場合もそうでした。そこで、『どこでどんなときに使うかはっきりしない物は、部屋をより狭くしてしまう原因になるので、気持ち良く暮そうとしても足をひっぱる原因になってしまうし、掃除するのにも手間がかかってしまうので、お義母さんが頑張って処分してくれたらすごーく助かります。大変だと思うけど頑張ってくださいね!」と、私が助かるということを強調しながらお願いしました。

『いらないものは処分してくださいね』とお願いすることは、『たいした物なんて入っていないんだから、箱の中のものは片っ端から捨ててちょうだい!』と言われているようなもの。そんなふうに言われるより、ずーっといいですよね? これからは、持つ量は少なくなったとしても、お義母さんにとって必要な物は買いましょうね」と言いながら処分をうながしました。

 

「何を残せばいいのかわからなかったら、私の本職だからいつでも手伝わせてね」とも伝えたが、物を捨てられない義母は、一軒家に引っ越してからもずっと荷物に埋もれ、キッチンで寝ていたこともあったという。

 

「引っ越すにあたり、相当なものを処分したと思います。でも、義母はどれだけ捨てたかを私に言えないタイプの人。一軒家に越してからも、体力的には手伝ってもらいたかったのだと思いますが、それ以上、踏み込んでほしくないところもあるみたいなんですね。それはプライバシーなことだから、あえて踏み込まないようにしました。

 

ただ捨てさせるのではなく、前向きに整理できるよう配慮 

 

リビングや洗面所などの共有部分には、義母が何を置いてもかまわない、幅約45センチ、高さ約180センチの義母専用の収納場所を設けました。私たち夫婦はそれぞれ洗面所の棚1段ずつ。『お義母さんは特別扱い』というのは一目瞭然です。

 

それは、わざとそうしました。お義母さんの物をただ捨てさせようとしているんじゃなく、できるだけ収納場所は作ろうと思っていることや、気を使っていることが目に見えることも、実は大切ですから。

 

それでもお義母さんの物があちこちに散らかっていることも多かったですよ。リビングにめがねやカバンが2つ、3つ置きっぱなしになっていたり、アクセサリーや手紙、お札、ハンカチやら何やらが見つかったり。義母の部屋にもテレビがあるので、リビングで一緒に過ごすのはほんの少しの時間なのですが、ついつい自分の部屋に入りきらないものを持ってきては置いていたのかもしれませんね(笑)」

 

第4回へ続きます

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撮影/森安照 取材・文/小山まゆみ

 

 

近藤さん プロフィール1edited近藤典子(こんどうのりこ)住まい方アドバイザー、株式会社 近藤典子Home & Life研究所取締役、「近藤典子の暮らしアカデミー」校長

1957年、兵庫県生まれ。2000軒以上の暮らしの悩みを解決し、10人いれば10通りの住まい方があると、住み手にあった近藤流の暮らしを提案。テレビ、雑誌、新聞などメディアや講演会での活動のほか、企業との商品開発やコンサルティング、間取り監修などでも幅広く活躍中。2011年度より小学校、2013年度より高等学校の家庭科用教科書(共に東京書籍)に登場。現在、「住まい方アドバイザー養成講座」の準備中。
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