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住まい方アドバイザー 近藤典子さんの親の家の片づけ 第2回〜毎日使うキッチンはお互いの意見を尊重~

どうしてもお互いが譲れないものは、じゃんけんで解決

 

義母との同居で一軒家に移り住んだ近藤さん。

 

一緒に住むにあたり、前もって義母と家事の分担を決めたという。

 

「一緒に気持ち良く暮らすために、『お互いの家事の分担や共有して使う掃除道具や調理道具など、何を持ち寄ってどこに置くのかを、お互いに充分話し合って決めておきたい』と義母に説明しました。限られた時間でしたが、結構ちゃんと話し合いました」

 

その結果、義母は自分の洗濯物と自分の部屋の掃除、それと運動も兼ねて玄関先の掃き掃除を担当することに。料理や家の中の掃除など、家事全般は近藤さんの担当になった。そのため、掃除道具や調理道具はすべて近藤さんが使っていたものを持ち込み、義母の物は全て処分してもらうことになった。

 

家電類も、2つ必要なもの以外は2世帯のどちらが新しいかで(機能もチェック)持ち寄るほうを決め、それを置く場所や家具の設置にいたるまで、何の問題もなくスムーズに決められたという。

 

「それぞれの家事を担当する人が使いやすい道具にするほうが、当然家事の効率がよくなります。家事分担を先に決めておくことで、お互いに持ち寄るものの取捨選択が予想以上にスムーズに進みましたし、心のしこりを残すこともなく済みました」

 

暮らしのなかで一番大切な「食」は、とくにていねいに選別

 

しかし、そんなスムーズな話し合いで決めたことでも、一緒に暮らしていくうちにお互いいろいろな思いが出てきて、のちに不協和音が生じる場合もよくある。

 

とくに「食」は暮らしの中心。

そこで近藤さんは、念には念をと義母に投げかけた。

 

「お義母さん、いくら料理をしないと決めても、ちょっと気分が向いたときに何か作りたいと思うこともあるんじゃないですか? そんなとき、自分の使い慣れたものがなくて大丈夫? って。そうしたら、『とくに何もいらないけれど、土鍋だけは私のものを使って欲しい」ということだったんです。その土鍋は義母にとって、かなり思い出が詰まったものだそうで、新居のキッチンには義母の大きな年季の入った土鍋と、私の小さな土鍋が同居をしました(笑)」

 

近藤さんの「エリア」であるキッチンまわりは、義母も納得のうえ、近藤さんのものを使うことになった。ただし問題は食器。

 

「いくら義母が料理をしないといっても、おやつを買ってきたときなどは好きな食器を使いたいだろうし、自分の好みや使い慣れた食器で食事をすることで心が癒されるときもあるでしょう。それは、義母だけではなく私も同じですから」

 

しかし2世帯ぶんの食器は当然、新居のキッチンスペースに収まらない。どうしても1世帯ぶんが限界だった。

 

そこで、近藤さんが義母に提案した打開策がある。

 

「ジャンケンをしました。『お義母さん、勝負しかないわ!』って(笑)。義母は拒んでいましたよ。ジャンケンなんかで? と言って。もちろん、義母の世代の人はものを捨てられないというのは、十分理解したうえでの提案です。ジャンケンは、一緒に住むために必要なものだけを選ぶ重要性を強く意識してもらうためと、『お義母さんのことを無視していませんよ。一緒に暮らすことに前向きに参加してくださいね』という気持ちを込めての提案でした。それともうひとつ、あとになって笑い話になるような思い出も作りたかったので!」

 

引越前、お互いの家にご主人の弟夫婦を呼び、食事をしながらみんなの前で、食器の要・不要を決めるジャンケン大会を決行。

公平な決め方のジャンケンにもかかわらず、義母から何度もやり直しをせがまれたり、ジャンケン大会は大いに盛り上がった。

 

「最初は気乗りしなかった義母も、まわりの協力を得ながらお祭り気分になり、気持ちよく自分のものを手放してくれました。実は私、ジャンケンがかなり強いんです! おかげさまで食器棚に収まっているのは、8割以上が私の食器です(笑)」

 

第3回に続きます

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撮影/森安照 取材・文/小山まゆみ

 

 

近藤さん プロフィール1edited近藤典子(こんどうのりこ)住まい方アドバイザー、株式会社 近藤典子Home & Life研究所取締役、「近藤典子の暮らしアカデミー」校長

1957年、兵庫県生まれ。2000軒以上の暮らしの悩みを解決し、10人いれば10通りの住まい方があると、住み手にあった近藤流の暮らしを提案。テレビ、雑誌、新聞などメディアや講演会での活動のほか、企業との商品開発やコンサルティング、間取り監修などでも幅広く活躍中。2011年度より小学校、2013年度より高等学校の家庭科用教科書(共に東京書籍)に登場。現在、「住まい方アドバイザー養成講座」の準備中。
近藤典子オフィシャルホームページ http://www.hli.jp/
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