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主婦弁 澤田有紀の「親・家・片」法律コーナー 第6回 遺言やエンディングノートが出てきたら

自筆証書遺言は、
遺言として有効に成立しているかが問題 

 

親の家を片づけていて、遺言やエンディングノートがでてきたらどうするか……。最近は「遺言キット」や「エンディングノート」関連の書籍が多数出版されていますので、これらが出てきた場合の法律問題についてお話しします。

 

①遺言の場合

遺言には形式上、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があるということは第2回目「相続問題のポイント」で説明しました。

 

公正証書遺言であれば、その旨が遺言の表紙に記載されていますのですぐにわかると思います。

問題は遺言キットなどを利用して作成された「自筆証書遺言」ですが、まず遺言として有効に成立しているかが問題となります。

 

自筆証書遺言が法律上効力を持つためには、まず形式的な要件を満たす必要があります。

すなわち①全部、本人の手書きであること②署名と押印があること③日付が特定されていることが必要です。

 

しかし、封をして封筒に入っている場合には、勝手に開封してはいけませんので、家庭裁判所の検認の手続きを経てその内容を確認することになります。検認では、どのような状況で遺言が見つかり、検認の日まで誰が保管していたのかということを聞かれた上で、封を開けて内容を確認して検認調書にし、遺言には検認済証明書が添付されます。

裁判所では、あくまでも「このような遺言(らしきもの)がありました」ということを確認するだけで、検認をしたからといって遺言が有効であることが認められるわけではありません。

 

私は何度か検認の現場で、内容に不服のある当事者が「お父さんの筆跡と違う」とか「そんな内容は納得できない」などともめ始めるのに立ち会ったことがあります。遺言が偽造であるとか、本人の意思に反して書かされたというようなことは、あらためて遺言無効確認訴訟など別の手続きによって確定する必要があります。

 

自筆証書遺言でも検認を経た上で、不動産の相続登記手続きや、金融機関の名義変更手続きに利用することができますが、内容が不明確であると、受け付けてもらえないことがあるので要注意です。

遺言キットなどの解説にしたがって正確に作成されていれば、名義変更の手続きで利用できる可能性は高いのですが、素人が作成したものである以上、そのまま使えず、あらためて遺産分割協議書などを要求される可能性もあります。

 

実際に私の事務所に持ち込まれた自筆証書遺言で「自宅をA子に譲渡します」というような文面が書いてあったのですが、登記手続きの際には法務局に、自宅が特定できないということと、A子が誰かが特定できないことで受け付けてもらえませんでした。

エンディングノートに法的効力はありません

 

②エンディングノートの場合

エンディングノートに遺言のように財産の配分方法などの記載があったとしても、エンディングノートは形式上、自筆証書遺言の要件を満たしませんので、法的には遺言としての効力がありません。相続人は、エンディングノートの記載に従う必要はないということです。

 

たしかに、故人がどうのように考えていたのかがわかり、それを読んで子供たちが納得するとか、どんな財産があるかを探さなくても、目録のようになっていれば便利だというメリットはありますから、有用性を否定するつもりはありません。

しかし、せっかくエンディングノートを活用して準備をするのであれば、もう一歩進んで遺言も作っておいてほしいなと思います。

 

(太字の専門用語については下記の解説も参考にしてください)

 

公正証書遺言

遺言書の方式のひとつ。公証人の前で、遺言者が遺言の内容を述べた内容を公証人が正確に文章にして作成する。

 

自筆証書遺言

遺言書の方式のひとつ。遺言者が紙に自筆で遺言の内容を全部書いて、日付・氏名を記し、署名の下に押印をすることによって作成する遺言。簡単に作成できるが、素人判断で作成すると形式面で無効になったり、内容が不明確で相続手続きに使えないこともある。

 

検認

相続が発生した後、自筆証書遺言を発見した者は、家庭裁判所に申し立てをして、その遺言書の存在と内容について検証してもらい、その結果を裁判所に「検認調書」にしてもらう必要がある。検認調書をつけないと自筆証書遺言は相続手続きに使えない。

 

検認調書

裁判所の書記官が作成する公文書。立ち会った裁判官、書記官、当事者などの名前が記載され、どのような遺言書であったという状態を確定する書面。

 

検認済証明書

検認が終わった後、遺言書にホッチキスなどで綴じて添付され、契印されます。これにより、自筆証書遺言を各種名義変更手続きなどに利用できるようになります。

 

遺言無効確認訴訟

遺言が偽造であったり、強制されたり騙されたりして作成者の真意に基づかない場合、作成時に認知症などで判断能力ななかった場合には遺言が無効になる。無効であることを確定するためには裁判により争う必要がある。

 

遺産分割協議書

分ける対象となる遺産の目録を作成して、それぞれが取得する遺産を明記し、その分け方で合意したことを明らかにするための書類。法定相続人全員が署名押印する。

 

 

 

澤田先生の法律事務所 弁護士法人みお綜合法律事務所 http://www.miolaw.jp/

sawada澤田有紀 
弁護士。弁護士法人みお綜合法律事務所所属。奈良県生まれ。昭和60年大阪大学文学部英文科卒業後、商社勤務後エレクトーン講師に。阪神淡路大震災をきっかけに、「何か人の役に立つことがしたい」と一念発起。弁護士を目指す。1回で司法試験に合格し、平成12年に弁護士の道へ。専業主婦から弁護士になった「主婦弁」として各メディで活躍中。主な著書に『人生を変える!3分割勉強法』(祥伝社)、『カード&住宅ローン危機』、『相続でもめないための遺言書』(ともに主婦の友社)。

 

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